衆議院・予算委員会第7分科会質疑録
1997年3月4日

次に、丸谷佳織君。

丸谷佳織
 新進党の丸谷佳織と申します。
 きょうが初めての質問でして、大変緊張しておりますし、何かと不手際な点があるかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、二十一世紀を目前にしまして、情報社会も大きく今変化のときを迎えていると思います。日本でも、CATVの普及ですとか、昨年の六月に開始されました衛星デジタル多チャンネル放送により、新たな情報時代が到来します。
 今後、チャンネル数がどの程度までふえていく予定なのか、見通しをまずお聞かせください。

楠田政府委員
 CSデジタル多チャンネル放送は、昨年の十月に始まりまして、六十数チャンネル今サービスされております。なお、この間あと三十数チャンネル新たな認定をいたしましたので、間もなく百チャンネルになろうと思います。
 そのほか、JスカイBという計画とディレクTVという計画もございます。これはまだ計画段階でありますが、それが入ってまいりますと、二つ合わせますと三百数十チャンネルになろうかと思います。
 なお、そのほか、地上波にいたしましても、あるいはBS放送にいたしましても、これがデジタル化ということになりますと、来世紀にはそれぞれかなりの、例えば地上波ですと今の三倍ぐらいのチャンネル数がとれるようになりますし、BSにおきましても、現在四チャンネルでありますけれども、これがデジタル化ということ、この間検討会の報告が出ましたので、もう少しチャンネル数が倍あるいは三倍ぐらいふえるような形になろうかと思っております。

丸谷佳織
 では、三百を超えるチャンネル数という認識でよろしいでしょうか、今のところは。

楠田政府委員
 近い将来に三百チャンネルの衛星デジタル放送が出てくるというふうに想定しております。

丸谷佳織
 三百を超えるチャンネルから発信される情報量といいますと、本当に想像を超えるものがあるのですけれども、本来マスメディアが果たす役割に、まず正しい情報の提供、そして娯楽の提供、また教育機能などあります。このことは、公共の奉仕という意味で大変重要なことだと思いますが、視聴者が多大な情報から情報を選択する幅が広がり、また同時に視野も広がっていく、その分だけ可能性も広がっていくという利点もあると思います。
 先ほどの赤松代議士の質問に対する楠田放送行政局長の答弁の中で、CATVの将来性に大変期待を寄せているというお言葉もあったのですけれども、多チャンネル化が社会にもたらす意義、そして並行して考えられます問題点についてどのようにお考えになっているか、お聞かせください。

楠田政府委員
 多チャンネル化が進みますとどういうメリットがあるかということを申し上げますと、多様な分野、内容の番組による視聴者の多様なニーズの充足ができる。それから、放送の送り手の多様化が進みます。現在では、限られたチャンネルですから、放送できる人というのは非常に少ないわけであります。これからは、多チャンネルになりますと、放送したいといういろいろな分野の方の放送が可能になってまいります。それから、視聴者といいますか、国民の行動選択に対するいろいろな情報の提供ができる。私はこういう分野が好きだ、私はこういう分野が好きだというのは、これから好きな放送が見られるという選択機能が出てまいります。
 一方、マイナス面といいますか、問題点と申しますと、非常に多いものでありますから、場合によっては質の低い番組が増加するというおそれがございます。あるいは、番組の編集責任に対する認識というものが薄くなるのではないかということがございます。それから、非常にたくさんの放送とか番組が出てまいりますと、視聴者の情報選択能力によるところが多い。十分な選択ができる人とできない人という、情報格差といいますか、そういう問題が出てくるというふうに認識しておるところでございます。

丸谷佳織
 今のお答えの中で、放送の質の低下あるいは責任制度などというふうにおっしゃいましたけれども、最近、放送だけではなく、新聞や雑誌もそうなのですが、情報がふえてくる、また競争がふえることによる報道による人権侵害のおそれについては、どのようにお考えになっていますでしょうか、増加すると思われますでしょうか。

楠田政府委員
 放送の多チャンネルが進展いたしますと、放送の機会がふえるわけであります。したがいまして、いろいろな送り手が出てまいりますと、場合によっては、信憑性の低い情報を送ったりすることによりまして、人権侵害等の問題が増加するおそれというものはやはりあるものと認識はいたしております。

丸谷佳織
 実際、報道による人権侵害で裁判になっている事件は、出版関係も含めますと、平成元年から五年の間に発表された件数だけで五十三件あるのですね。圧倒的にこれは新聞や雑誌というものが多いのですけれども、一方、放送による人権侵害ということになりますと、その放送一網、全国にネットされるという影響力の大きさから考えまして、早急に解決していかなければならない問題の一つだと認識しております。
 そこで、放送法で定めています番組審議機関についてお尋ねしたいと思います。
 まず、番組審議機関の活動内容、そして構成メンバーとその任期について教えてください。

楠田政府委員
 番組審議機関と申しますのは、各放送事業者が放送番組の適正化を図るために設置しているものでございまして、法律上は学識経験者をもって充てております。大体年平均十回程度開いております。委員の出席率は七二%ぐらいというふうに我々今、在京のキー局の場合、承知しているわけであります。
 任務でございますが、これは法律によりまして、放送事業者の諮問に応じて答申をすること、それから放送事業者に放送番組審議機関としての意見を述べること、こういうふうになっております。しかしながら、残念ながら、この諮問件数、意見件数ともゼロということであります。
 これはどういうことかと申しますと、諮問というのは放送会社がしなければならない。これはどういうことを諮問するかといいますと、番組の編集の基本計画あるいは番組基準というものでありますが、番組基準というのは、例えば放送事業者が放送局を開設したときつくりますが、後に全然これを変えないと、諮問しないということになるわけですね。こういうような欠陥がございます。それから、番組の編集基本計画もそう何度も変えるものではない、こういう問題がございます。
 それから、意見を述べることというのも、個人個人は意見を述べるのですが、法律上は、この番組審議機関として御意見を申し上げるという形にならないと、それは正式の意見とならないわけでありますから、したがいまして、番組審議機関の中ではいろいろな意見は言うのですけれども、本当の外へ発表する意見というのがないという問題が現在ございます。
 そういう中でこの番組審議機関をどのように活性化するかということは、一つの大きな課題というふうには認識しております。

丸谷佳織
 今欠陥を御指摘されたのですけれども、では、この番組審議機関は、実際に広く市民の声が届くシステムではない機関なのでしょうか。また、例えば番組の中で人権が侵害されるようなことがあった場合、その具体的な対処まで話し合う機関なのかどうか、教えてください。

楠田政府委員
 番組審議機関は、まさに番組の審議委員そのものが視聴者の代表という形になっております。だからといって、すべて市民の意見が吸収されるかどうかま別だと思いますけれども、とにかく審議委員というのは視聴者の代表というふうに考えてもいいかと思います。
 それで、一方、人権侵害のような問題をこういう番組審議機関で話すのかということになりますと、これはそうではない。要するに、番組について意見を申すのでありまして、番組の問題が人権侵害のような問題に当たれば、そのことについては審議はすることはあると私は思います。ただ、そういう人権侵害に当たる問題を限ってここで問題とするという機関ではございません。広く番組全般を審議する場、こういうふうに御理解いただければと思います。

丸谷佳織
 ではもう一度確認させていただきたいのですが、その放送された番組の内容が、ある特定の人あるいは団体の人権を侵害したような場合、それだけではないにしても、その件について、問題点について話し合う機関であり、具体的な対処まで話し合う機関ではないというふうな認識でよろしいでしょうか。

楠田政府委員
 お答えになるかどうかわかりませんが、現在、例えば放送法によりますと、こういう人権侵害とかいろいろな問題というのは、放送されたものによる侵害というふうに考えるわけであります。そうしますと、放送されますと、例えばそれが事実に合っていないということがあります、そういう場合は訂正放送制度というのがありまして、それによって放送会社の方へ、これは事実が違っている、その事実の違いによって私は権利を侵害されたという要求をいたしますと、放送事業者が調査いたしまして、それを訂正するか訂正しないかを決めるわけであります。こういう制度がございます。
 ただ、この問題そのものは、現在、番組審議会の中でそれを取り上げるとか取り上げないとか、そういうことは決まっておりません。人権侵害の問題は、別途こういう訂正放送をやりましても民事上の措置を妨げないとなっておりますから、本当に人権侵害になりますと、現在では裁判所へ訴える、こういう系統になっております。

丸谷佳織
 では、今おっしゃいました訂正放送についてお伺いしたいと思います。
 この訂正放送制度というのは、報道による人権侵害の対処の一つだと思うのですけれども、実際にその実施状況と具体的な事例として一つ挙げていただきたいと思います。

楠田政府委員
 先ほど申し上げましたように、訂正放送制度は、真実でない事項の放送をしたという理由によって、その放送により権利の侵害を受けた本人またはその直接関係人が、放送のあった日から三カ月以内に訂正放送の請求を当該放送を行った放送事業者に対して行うことができるという制度でございます。放送事業者は、その請求を受けたときは、遅滞なく調査を行いまして、当該放送が真実でないことが判明した場合は、判明した日から二日以内に同等の放送設備により訂正放送をしなければならないというふうになっております。
 この訂正放送の実施状況でありますが、数字を申し上げますと、平成元年度から平成九年の一月末までで二十六件の報告を受けているところでございます。平成元年、二年ぐらいは二件とかゼロ件でありましたが、最近の平成八年は実施件数が八件、請求件数が十一件ということで少しふえてきておるということであります。ふえた理由といたしましては、法律改正によりましてこの請求の期間を延ばす、あるいは番組の保留期間といいますか、そういうものを延ばすということも影響があろうかと思います。
 何か具体的な例はないかということでありますが、一つ例を申し上げますと、ある放送事業者が、平成八年の五月十日放送の「ニュース・ディス・イブニング」というのがあったのですが、そこでアメリカのサンディエゴの父親と娘の射殺事件というのがありまして、妻のSさんについて後妻と受けとめられるようなコメントをした。その奥様から、これは違いますというふうな要求がありまして、これは直ちに同じ番組で訂正放送をした。これは非常に簡単な例でありますけれども、事実が違っていたということであります。

丸谷佳織
 今のお答えの中で、ここ数年訂正放送の回数もふえているというお話もあったのですけれども、実際に報道による人権侵害、特にテレビの場合は、新聞、雑誌に比べますと事例自体は少ないかもしれないのですが、新聞、雑誌が意識をして読者が読むという視点に比べまして、テレビの場合は一日じゅうつけっ放しにして何気ないうちに情報が入ってくるという人も少なくないと思います。また、多チャンネル化によりまして、視聴率争いの激化、番組はよりセンセーショナルな内容を扱い、またメディアは広告優先主義に走るというおそれもあると思います。
 先ほど、民事の方で名誉毀損で裁判を求めるというお答えもありましたけれども、今の法制度の中では実際に裁判自体長い年月がかかりますし、かなりの費用もかかります。また、判決がおりましても、平成元年から五年の間の損害賠償請求事件で払われた慰謝料の平均が約七十五万三千円弱と非常に低額と言わざるを得ない状況になっております。
 その中で、現在の番組審議機関あるいは訂正放送制度では、人権が侵害されましても、救済方法にある程度の限界があるように思えてならないのですけれども、今後増加するおそれのある報道による人権侵害の救済策を、放送事業者による自己点検あるいは訂正放送だけで十分とお考えでしょうか、教えてください。

楠田政府委員
 放送による権利侵害といいますか、人権侵害の問題につきましては、ここ数年非常に関心も高まりまして、国会でも何回か御論議いただいたところでございます。
 そういう中で、昨年の十二月に私ども、多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会というのがありまして、その中で一つの問題として取り上げていただきました。
 そこでありましたのは、いろいろな放送に対して、まず第一義的には人権侵害も含めて放送会社へ、訂正放送も含めて苦情が参るわけであります。しかじ、そこでもなかなからちが明かない、放送事業者も本当に客観的にやってくれるかどうかわからないという不満がございます。そういう不満がありますと、どうしても我慢ができないと民事に行くということですが、これは先生御指摘のようになかなかうまくいかない。そうしますと、この間に何か第三者的な意見を聞くようなものが必要なのではないかという御議論がございまして、放送事業者から独立した第三者の意見を聞く、苦情処理、人権侵害も含まれております、そういう苦情処理を行うような機関の必要性というのが提言されております。それは裁判のように裁定力というものは持たないけれども、例えばそこでいただいた意見を放送会社は尊重しなければならないというふうにするというようなことが一つの可能性として出てまいります。ちょうど中間的な存在ということであります。

丸谷佳織
 昨年の九月に発足しました多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会、私はこの懇談会にはとても敬意を表しておりますけれども、新聞の記事を読みますと、メディア側の方は第三者機関の設置には反対されている事業者の方が多いと思うのですけれども、人権というとてもとうとい権利を守るためには、やはり未然に人権侵害を防ぐとともに、被害を受けた人を救済するシステムがどうしてもこれから必要になってくると思います。
 また、メディアが競争が激しくなるにつれまして視聴率万能主義に傾いていく、その中で自己点検と自己革新をもし徹底して行えないならば、第三者的な機関が必要になってくると思いますが、表現の自由というものも守られなければいけないとうとい権利ですので、このバランスをとりながら、ぜひ今後も人権というとうとい権利を守るために最大限の努力をしていただきたいと思います。
 さて、多チャンネル化によりまして、当然コマーシャル、広告の増加というのも考えられるのですが、報道内容だけではなく、メディア自体の広告もセンセーショナリズムの度を増していくというおそれもあるかと思います。現在でもより印象的で刺激的な見出しが、時には広告自体が記事との整合性もないままに電車の中づり広告など、影響力は増幅されているのですが、去る一月二十七日、平田米男議員が予算委員会の中で、昨年の十二月に中づり広告にも名誉毀損の判決が出ました北海道苫小牧市の白山氏の件について取り上げられたことは、人権擁護局はどのように把握されていらっしゃるでしょうか。

竹田説明員
 お答えします。
 ただいまの事案につきましては、人権擁護局として正式には承知しておりません。

丸谷佳織
 これは、判決が出たのが昨年の十二月なんです。今までは記事に対する判決で名誉毀損という件はありましたけれども、中づり広告、これは週刊新潮社の中づり広告だったんですが、まず見出しがありきでその後に記事をつけてしまった、そういう悪質な中づりの記事で、著しく白山さんの人権を侵害したという判決がおりまして、こちらは判決百十万円の賠償額が支払われたという一件なんです。これは、テレビだけではなく、中づり広告などコマーシャルの激化による人権侵害の大切な一例だと思いますので、ぜひ御認識いただきたいと思います。
 これは交通事故の一件だったんですが、悪質な報道または広告によりまして、交通事故の被害者から一瞬にして殺人犯呼ばわりされて、本当にこれは大変な人権侵害だったんです。人権擁護局としまして、大変な人権侵害だったということも認識していただきたいと思いますが、今後のことをお聞きします。
 番組や記事だけではなく、広告などでも人権侵害、報道被害と呼べる事態の発生が予想されるのですが、これは実際に発生していくおそれがあるというふうには認識されているでしょうかどうか、教えてください。

竹田説明員
 報道の内容のほかに、そうした広告あるいは中づり広告等の見出しと申しましょうか内容等によっても、一定の連想等を含めて人権の侵害という事実が発生する可能性はあると思います。

丸谷佳織
 発生されると予想されるであろう人権侵害、報道被害だけではなく、コマーシャル、広告などでの人権侵害に対応して未然に防ぐとともに、救済が必要だと思うのですが、今後どのようにしてこの問題に取り組んでいくおつもりか、お伺いします。

竹田説明員
 お答え申し上げます。
 報道の自由というのは、これは憲法の保障する表現の自由の一つでございまして、極めて重要な基本的人権でございますので、公共の福祉に反しない限り最大限尊重されなければならないということでございます。したがいまして、私たちの人権擁護機関といたしましては、報道機関の報道等につきましては、人権侵害にかかわる問題につきましても、公権力による介入であるという批判を受けることのないよう慎重に対応しているところでございます。
 そういうところから、まず報道の主体であるところのマスコミの自主規制等によりまして、自主的な取り組みによりまして解決されることが一番望ましいとは思っております。しかしながら、マスコミ等の行き過ぎた報道、今先生御指摘の広告、コマーシャルも含めましたこうしたものによりまして個人の名誉あるいはプライバシー等が侵害された場合におきましては、私たち法務省の人権擁護機関といたしましても、これに対応して適切な処理をしておるところでございます。
 具体的には、これらの報道機関等に対して、名誉、プライバシー等、個人の人権の尊重ということを十分に理解させ、人権尊重の意識を啓発することによりまして、自発的、自主的に人権侵害の事態を停止させ、あるいは被害の回復を図らせて、また将来再びそのような侵害の事態が発生することのないよう注意を喚起する等、所要の措置を講じているところでありますが、これら報道に伴う人権侵害の事案につきましては、今後も国民の人権を擁護するという立場から積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

丸谷佳織
 今後迎えます多チャンネル化、三百を超えるチャンネル数になるということに加えまして、雑誌記事等の広告もふえてくると思いますし、競争が本当に激しくなる中で、コマーシャル、広告の競争も激しくなってくると思いますので、どうか本当にとうとい権利であります人権について深く考えて、努力をしていただきたいと思います。
 ところで、最後にお伺いしますが、財政法二十八条にのっとりまして、次の項目に関する資料を要求いたします。平成九年度郵政省予算の電気通信格差是正事業等に必要な経費百億円の詳しい内容を提出していただきたいと思います。主査、お取り計らいのほどよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

松永主査代理
 今の丸谷委員からの要求に対して郵政省側、どうですか。

堀之内国務大臣
 適切に対応してまいりたいと存じます。

丸谷佳織
 大臣、よろしくお願いいたします。

楠田政府委員
 大臣の方から申し上げていただいて、私ちょっと失礼いたしました。
 適切に対処してまいります。

丸谷佳織
 どうもありがとうございました。

松永主査代理
 これにて丸谷佳織君の質疑は終了いたしました。