衆議院・本会議質疑録
1999年6月24日

丸谷佳織君 
 公明党・改革クラブを代表しまして、ただいま議題となっておりますケルン・サミットの帰朝報告について、小渕総理大臣に質問をさせていただきます。
 昨年、小渕総理は、内閣発足時の記者会見の中で、経済再生内閣としての責任を十分果たし得るように、その先頭に立って努力をしていきたいと、日本経済の再生に取り組まれる御決意を述べられましたが、本年一―三月期は、我が国の国内総生産が久しぶりにプラス成長となり、サミット参加国からも一定の評価を得られたとお伺いしております。
 と同時に、我が国は、あらゆる可能な手段を用いて、成長が回復するまで景気刺激措置を継続させることが求められているものの、例えば、六百兆円、GDPの一二〇%にも及ぶ国と自治体の借金などを考えたとき、景気の先行きには不透明感が残っております。
 小渕総理が目標とされている年〇・五%のプラス成長の達成を目指すには、一層の規制緩和や市場開放などの構造改革を進めながら、国民の意識改革を伴う日本経済再生への道を示す視点が必要と思いますが、総理の御見解をお伺いします。
 次に、ケルン債務イニシアチブについてお伺いします。
 G7は、重債務貧困国向けのODA債権を一〇〇%放棄することで合意しました。我が国の負担は四千億円とも言われていますが、その方法は、債権を一括放棄するのではなく、返済期間を四十年間繰り延べた上で、返済額と同額を無償資金協力で供与する、つまり、円借款の残高を無償資金供与に振りかえる形となっております。
 重債務貧困国への債務救済に応じることについて、政府は、納税者である国民に理解を求める必要があると思いますが、国民にどのような説明をし、理解が得られたと考えていらっしゃるのか、御認識をお伺いします。
 また、首脳宣言には、債権者間の公平な負担の分担が重要であることを認識するとの文言が盛り込まれていますが、いかなる方法で債権国の公平な負担が図られるのか、御説明願います。
 そして、重債務貧困国の債務削減を受けた今後の我が国のODAのあり方についてですが、現在、我が国は、途上国の自助努力を支援するため、返済を前提として資金協力を行っています。今月発表された九八年のODA総額でも、我が国は八年連続世界一の供与国であることが明らかですが、ほかの援助国が行っている贈与を中心とした援助に対し、我が国は返済を前提とした援助が半分以上を占めています。しかし、サミットで合意した債務救済措置により、我が国の援助が、結果的には贈与を行ったのと同じことになったと言えるのではないでしょうか。
 以上を踏まえ、ほかの援助国が今後も贈与を中心とした援助を行っていく中、我が国の援助形態を考え直す時期が来ているのではないかと思いますが、御見解をお伺いします。
 続いて、ユーゴ軍及びセルビア治安部隊のコソボ撤退を受けた今後の我が国の貢献策についてお伺いします。
 今月の二十日、NATO軍による空爆の終了宣言がなされましたが、この空爆を機に、セルビア人とアルバニア系住民の溝は深くなったとも言えます。
 我が国は、人道支援策として、紛争による難民に対し二億ドルの拠出を約束し、サミットにおいても、さらに難民の帰還、復興に追加支援を表明しました。政府としては、このような民族対立の先鋭化を踏まえて、今後のバルカン地域に対する我が国の貢献のあり方をどのようにお考えか、御説明願います。
 NATO軍によるユーゴ空爆は、中国、ロシアの反対が予測された国連の安全保障理事会の決議を経ずに開始されました。この方法は、国連憲章の精神を踏みにじるものとして批判をされている反面、独立国家内で発生している民族紛争に対して国連が対応するのは難しいとの問題を浮かび上がらせたのも事実です。
 総理は、十八日の夕食会において、コソボのような紛争解決には安保理改革が急務であることを強調され、国連及び安保理改革について積極的に発言をされましたが、肝心の具体的な内容についてお示しになっていません。国連及び安保理の改革を積極的に推し進めていこうとするのであれば、新世紀にふさわしい新たな国連像を国際社会に提示していく必要があると考えます。
 また、コソボ問題が国際社会に提起した民族浄化という人権問題に対し、国家主権がどこまで主張できるのかという問題について、国際法的位置づけをしていくことが求められているのではないでしょうか。国連改革についての具体策とあわせてお伺いをします。
 フランスのシラク大統領は、ベルギーでのダイオキシン汚染がパニックを引き起こしたことを受けて、遺伝子組み換え食品など、食品の安全性を確保するための国際機関の設立を提案されました。さらに、来年から始まるWTO交渉をにらみ、何でも自由貿易優先とはいかないとの見解から、食品については、安全が確認されるまで、予防的措置をとるようにするべきだと述べたと報じられています。
 我が国は、バイオテクノロジーの最先端を走る米国と違って、遺伝子組み換え食品に対する抵抗感が強く、消費者を中心に表示を求める動きが広がっています。このため、不安を抱く消費者の反発を招き、主力商品の不買運動にもつながるとの警戒感から、国内企業はまだ商品化に至っていないのが現状です。
 首脳宣言では、次回のサミットまでに、OECDの関係部会等におけるバイオテクノロジーを初めそのほかの食品の安全性に関する側面の研究及びその結果を踏まえた対応策の報告を求めていることからも、今後積極的にこの問題に対処していく必要があると考えますが、総理は、シラク大統領の提案にどのような対応をされたのか、また、食品の安全性についてどのような方針で臨んでいくおつもりなのか、御説明を願います。
 次に、北朝鮮問題についてお伺いします。
 今回のサミットで、小渕総理は、二度の首脳会議において北朝鮮問題に言及し、首脳宣言に北朝鮮のミサイル実験への憂慮を盛り込むことに成功されました。しかし、サミットの宣言に盛り込まれても、それが具体的な成果に直結するとは限りません。一九九二年のミュンヘン・サミットでは、北方領土問題が政治宣言に盛り込まれたものの、大きな進展は見られないのがその一例であります。
 北朝鮮問題については、ミサイル拡散など国際社会に波及する大きな問題であると参加国に認識させることが重要であると考えます。政府は、今回のサミットで、参加国、特に地理的に遠いヨーロッパ諸国に北朝鮮問題を理解してもらうために、どのような説明を行い、参加国の理解がどの程度進んだとお考えなのか、御見解をお伺いします。
 また、現在、大浦洞にあるミサイル発射基地内で発射台の整備拡張工事が進められており、ミサイル再発射については、一カ月以内の可能性は低く、仮に発射するとすれば、八月十五日、祖国解放記念日など、何らかの重要なイベントに合わせることも考えられるとの報道もあります。政府は、北朝鮮によるミサイル再発射の可能性についてどのように分析していらっしゃるのか、また、再発射された場合、どのように対応されるのかもあわせてお伺いします。
 最後に、サミット首脳会議後に行われた日ロ首脳会談に関連してお伺いします。
 エリツィン大統領との会談において、この秋の大統領の訪日と、二〇〇〇年までに平和条約を締結する方針が改めて確認されました。しかし、ロシア国内においては、エリツィン大統領の健康問題もさることながら、突然の首相交代などによる政治的混乱と経済的苦境によって、不安定な情勢が続く中、平和条約締結の期限までに時間的余裕があるとは言えないのが現状です。
 そこで、二〇〇〇年までの領土問題解決、平和条約締結に向けて、現在の膠着状況をどのように打開しようと考えていらっしゃるのか、御見解をお伺いしたいと思います。
 次回のサミットが、二〇〇〇年という節目の年に、我が国で、しかも沖縄で開催されるということは、我が国にとって大変な誇りであります。
 戦争の世紀と言われた二十世紀を締めくくるサミットとなることですし、今世紀に解決できることは、強いリーダーシップを発揮して、解決に当たっていただきたいと思います。ケルン・サミットで先送りされた数々の問題に加えて、普天間飛行場の代替地の決定など、SACOの積み残した案件も、サミット開催までに解決しなければならない我が国独自の問題であります。
 沖縄に過度に集中した在日米軍基地を先進国首脳が目の当たりにすることは、大変意義深いものがあると言えるでしょう。来年のサミットを機に、沖縄をアジア太平洋地域の平和の拠点と位置づけ、広く世界に宣揚していただきたい。例えば、沖縄に国際的なアジア平和センターを創設するなどして、沖縄から世界に向けて新世紀平和構築のメッセージを発信し続けることも大切ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 二〇〇〇年という佳節に開催地を沖縄に決定された小渕総理の、沖縄ミレニアム・サミットに向けた外交姿勢と御決意をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕

内閣総理大臣(小渕恵三君) 
 丸谷佳織議員にお答え申し上げます。
 まず、日本経済再生についてお尋ねがありました。
 経済を自律的成長軌道に乗せるために、雇用対策及び経済の供給面における体質強化に思い切った対策が必要であるとの考えから、今般、緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を取りまとめたところであります。現在の深刻な雇用情勢に対する対応を初め、できるものから速やかに実施をいたしてまいりたいと考えております。
 本格的な経済の回復に向けて、まさに正念場であり、今年度のプラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で臨む考えであります。また、規制改革、新規成長産業への振興等を通じまして、供給面の体質強化を図る構造改革が不可欠であると考えております。
 なお、去る一月十八日に経済審議会に対し諮問をし、二十一世紀初頭を念頭に置いた経済社会のあるべき姿と政策方針についての議論をいただいており、七月ごろを目途に経済新生の政策方針を取りまとめていただけるものと考えております。
 次に、重債務貧困国の債務救済についてお尋ねでありました。
 今回の合意は、自助努力にもかかわらず、重い債務を背負い、極度に貧困に苦しむ国々の真の再生のため、また国際社会の平和と安定の確保のため債務救済が必要であるとの考えに基づくものであり、国民の皆様の御理解をいただきたいと考えます。
 また、債権国間の公平な負担につきましては、各国に国際機関の信託基金への拠出を求めていく等の方法で、確保に努めていく考えであります。
 援助形態についてお尋ねがありました。
 援助の実施に当たりましては、個々の途上国の発展段階や債務負担能力についての配慮、途上国の開発計画、我が国の援助理念等を念頭に置きながら、適切にその形態を検討してまいりたいと考えております。
 なお、円借款につきましては、返済を前提としており、相手国の自助努力を促す有用な援助形態と考えておりますが、今般合意されました債務救済が行われた国々に対しては、新たな借款の供与は困難となり、無償資金が原則となると思います。
 バルカン地域の安定に対する我が国の貢献についてのお尋ねがありましたが、今回のサミットでは、あらゆる民族が平等かつ平和に生活し得る民主的なコソボ社会を建設すること、また、南東欧地域全体に平和と安定、民主化、経済発展をもたらすことをG8としての共通の目標とすることが確認をされました。我が国は、こうした観点に立ちまして、今後とも同地域に対する支援を行っていく考えであります。
 民族浄化と国家主権についてのお尋ねでありました。
 政府といたしましては、人道を理由とする他国への介入が、いかなる状況で、いかなる条件で、どの程度まで許される場合があるのかという点は、実は、いまだ国際法の問題としては形成途上の問題であると考えております。
 また、国連改革につきましては、二十一世紀に向け、国連が、御指摘の民族紛争への対応を含め、国際社会の直面する諸問題に有効に対応できるよう、安保理を常任、非常任議席双方の拡大等により、現在の国際社会の現実を反映した形で改革するとともに、開発、財政分野での改革も進めるべきものと考えます。
 次に、シラク大統領からの食品の安全性に関する提案についてのお尋ねでありましたが、食品の安全性に関する新たな独立した機関を設立することを検討すべきであるとのシラク大統領の提案につきましては、サミットにおける議論の結果、食品の安全性の問題については、既存の国際的枠組みの中で検討していくこととなり、我が国もそれを支持いたしたところであります。
 遺伝子組み換え食品等、食品の安全性については、我が国としても、国際的な枠組みの中で取り組み、積極的に貢献していくことが重要と考えております。特に、遺伝子組み換え食品につきましては、これまでも、安全性の評価、国民への適切な情報提供、最新の科学的な知見の収集、安全性に係る研究の推進等に努めてきたところであり、このような実績を生かしながら、国際的な協力関係のもとで食品の安全性確保に努めてまいる所存であります。
 次に、北朝鮮についてのお尋ねでありましたが、私は、北朝鮮の核及びミサイル問題は、北東アジアの安全保障のみならず、議員が御指摘されますように、グローバルな不拡散体制にかかわる問題であることを強調しつつ、ミサイル再発射が行われぬよう、G8として強く警告すべきであることを主張いたしました。さらに、開発、輸出を含むミサイル活動全般の中止を求めていく必要があることも強調いたしました。これに対し、参加国首脳から、懸念を共有する旨の発言がございました。
 北朝鮮のミサイル再発射についてでありますが、政府といたしましては、本件については、関係諸国間で密接に連絡をとりつつ、細心の留意を払って、継続的に情報の収集、分析に努めておりますが、現時点におきましては、ミサイル発射が差し迫っているとは判断しておりません。政府といたしましては、今後とも、米韓等と連携しつつ、北朝鮮のミサイル再発射を抑止するため、最大限の努力を行っていく考えであります。
 次に、日ロ関係についてのお尋ねでありましたが、今般のケルンでのエリツィン大統領との会談では、四島の問題を解決して平和条約を締結し、日ロ関係を抜本的に改善させていくことについての大統領の強い気持ちを改めて感じました。私といたしましては、引き続き首脳レベルでの緊密な対話を維持し、クラスノヤルスク合意の実現と日ロの全面的協力関係の確立に向けて、全力を尽くしていく考えであります。
 最後に、二〇〇〇年のサミット開催についてお尋ねがありました。また、御意見もちょうだいいたしました。
 来年のサミットに向けての決意を申し述べろ、こういうことでありますが、今次ケルン・サミットの議論を踏まえまして、今後準備を本格化することとなります。特に、二十一世紀の国際社会においてますます大きくなると思われるグローバリゼーションの流れや二〇〇〇年という区切りの年に行われるサミットであるという事実を踏まえ、また、アジアにおけるサミットであるという視点に立って、新しい世紀に向けた明確なビジョンを打ち出す機会といたしたいと思います。
 今後、沖縄県を初めとした各自治体と緊密な連携をとりつつ、歴史的に意義深いこの九州・沖縄サミットを成功に導くため、万全の努力をいたしてまいりたいと考えております。
 以上、答弁を申し上げました。(拍手)