衆議院・本会議質疑録
1998年4月7日

丸谷佳織
 新党平和の丸谷佳織でございます。
 私は、平和・改革を代表して、ただいま議題となりましたASEMの帰朝報告について、橋本総理及び小渕外務大臣に質問をさせていただきます。
 四月二日から開催されたASEMにおいて、橋本総理が精力的に各国首脳と会談をされ、未来志向の外交対話で友好を深められたことに心から敬意を表するとともに、三日間という短い日程での激務、大変にお疲れのこととお察し申し上げます。しかし、ハードスケジュールよりも総理の疲労感を増幅させたのは、ロンドンに向け出発された日の夕刊の見出しだったのではないでしょうか。
 日経新聞の一面を飾ったフレーズは「日銀短観 主要製造業二〇ポイント落ち込み 景気腰折れ裏付け」、読売と毎日が「景況感、大幅に悪化」、朝日は「日銀短観、大幅に悪化」、産経は「景気、後退局面に」、そして東京新聞が「企業心理総崩れ」等々、大手六紙すべてが日本経済の危機を強く訴え、総理の経済対策が誤っていたことを浮き彫りにしたからです。アジア通貨危機が最大のテーマとなるASEMに出発された直後、このニュースを聞かれたときの総理の率直なお気持ちをまずお聞かせください。
 また、総理が日本御不在の間、円売りは進み、一時百三十五円台を記録しました。一九九一年以来のことです。株価も公的資金導入のかいもむなしく低迷をきわめ、円安、株安、債券安のトリプル安としてとどまる気配を見せません。
 ここまで日本経済が疲弊してしまったのは、その場しのぎの策しか講じてこられなかった政府の責任力不足と景気判断の誤りが原因だったと、ここで率直に御認識いただきたいと存じますが、総理の御所見をお伺いします。(拍手)
 さて、現在、アジアは依然として深刻な経済危機に見舞われ、通貨統合を間近に控えた欧州にもその暗い影が及んでおります。ASEAN各国への海外直接投資は減少し、九七年の投資認可額は、マレーシア、ベトナム、ミャンマーで前年比三〇%以上の落ち込み、タイでは二〇%の減少となっています。特に、日系企業の投資減少が目立つ中、本年の投資も鈍るであろうことは容易に想像がつきます。
 ASEM開催中、総理は、国際舞台で各国の追及を回避したいがために、内需拡大に向けて十六兆円という経済対策を打ち上げ、そして大型の減税にも言及されました。アジア経済危機に対しては世界最大の資金協力を含む支援措置を行ったなど、苦しい経済状況下でずば抜けて大きな役割を果たしてきたと主張されましたが、参加各国は我が国の政策と実績を相応に評価をしたのでしょうか。評価を得られたというよりは、逆に日本経済がアジアの危機を加速しているとの不満の声の方が大きかったのではないでしょうか。
 では、なぜ国際社会で相応の評価を得られないのか。それは、遅過ぎ少な過ぎの特別減税と同じで、後手後手、タイミングの悪さ、つまりは判断力の欠如が原因と言っても過言ではありません。
 大型減税についても、今言及されるのはやはりタイミングが違うのではないでしょうか。なぜなら、参議院で平成十年度予算案が審議されている今の段階で、早期の補正予算を伴うような経済対策は、みずからの政策を否定するのと同時に国会軽視と言わざるを得ないからです。
 総理、責任政党の総裁としても、今本予算を修正し、大型減税を実施するのが正しいタイミングだとお考えになりませんか。
 私には、総理の耳に市場が発している最後のメッセージが届いているか、大変疑問に思えます。今月末に迎えるOECD閣僚会議に続き、バーミンガム・サミット、WTO閣僚会議、APEC貿易担当大臣会合と重要な外交日程が控えています。アジア経済の牽引力と期待されている我が国が国際社会から正当な評価を得るためにも、景気浮揚に効果の薄い政策ミスは二度と許されません。総理の御所見をお伺いします。
 それでは、ASEM全般についてお伺いします。
 アジア、欧州各国の首脳が一堂に会し広く意見交換が行われたことは大変喜ばしく思います。従来、ともすれば結びつきの弱かったアジアと欧州が政治対話の場を設け、今後も関係を強化していく姿勢は、冷戦の終結後ますます必要とされると感じております。ASEMは今回でようやく二度目と誕生して間もなく、我が国内でもまだなじみの薄いことは否定できません。
 採択された議長声明によりますと、時期は盛り込めなかったものの全メンバー国のWTO加盟など多角的自由貿易体制の強化を強く打ち出しており、今後も共通の規範作成が進むことは間違いないでしょうが、真の交流を確立するには、ASEMのような国際会議の場を単なる話し合いに終わらせることなく、互いの存在をかけた、信念と信念がぶつかり合う真の対話の場とし、時として対立を生み、差異を際立たせたとしても、現存する利害の不一致を乗り越えた政治対話で二十一世紀をつくっていくべきだと思います。それには、依然多くの問題が未解決のまま存在しております。また、加盟国数を見ましても、欧州の十五カ国に対しアジアは十カ国にとどまっています。オーストラリアを初めとする幾つかの国の加盟を日本は推していたと承知しておりますが、実現がならなかったのは残念です。
 以上の点を踏まえ、日本はASEMをどのようにとらえ、またアジアの代表として欧州とのかけ橋になるべくいかにリーダーシップを発揮すべきと考えているのでしょうか。総理の御見解をお聞かせください。
 次に、韓国との関係及び大統領の訪日が予定されているロシアとの関係などについて、順次御見解をお伺いします。
 総理は、首脳会議に先立ち、韓国の金大中大統領との初の首脳会談を行い、日韓の政治、経済、文化などの分野での包括的な協力関係を初めてうたう日韓パートナーシップの策定に向けて作業を開始することで合意しました。金大中大統領との会談は、余り具体的な内容というより二十一世紀に向けた新たな日韓パートナーシップの構築のための話し合いなど、両国間に横たわる山積した問題についての討議は大統領の訪日時に先送りされた感があります。
 ただ、この会談の中で大統領は、就任時にも述べていらっしゃったように、我が国と北朝鮮が交流をするのは望ましいが、北朝鮮が韓国との関係を改善せずに、米国、日本との関係改善を図るのは望ましくないと述べたと報じられています。この金大中大統領の考え方と、韓国の頭越しに北朝鮮と関係を進めるのを否定してきた金泳三前大統領の考え方とはどのような相違があるととらえて、今後の対北朝鮮関係改善に向けた外交を行おうと考えていらっしゃるのか、総理の御見解をお伺いします。
 これに関連して、先日北朝鮮から帰国した自民党の訪問団は、よど号事件の容疑者グループの帰還をきっかけに国交正常化の準備などをする連絡事務所をピョンヤンに設置することで朝鮮労働党と一致したと発表されています。韓国と北朝鮮との関係は休戦状態のままで連絡事務所は開設されておらず、両国の対話は板門店あるいは北京などで行われている現状で、我が国が連絡事務所の設置に向けた行動を起こすことは、韓国の感情を逆なですることになりはしないかと懸念するものであります。また、日本人拉致疑惑の解明が進まないために政府間協議が暗礁に乗り上げている中、拉致疑惑解明という人道問題とよど号事件の容疑者帰還問題とは次元が違うという異論もあります。この懸念、異論に対する総理の見解をお伺いします。
 日本と韓国は、もはや、安全保障はもちろんのこと、経済関係でも運命を共有しております。次の世代の繁栄のため、二〇〇二年サッカーワールドカップの成功や天皇陛下の御訪韓の実現など、さらなる相互理解を推進していただきたいと思います。
 次に、ロシア関係についてお伺いをします。
 ASEMの拡大に関してロシアも参加を表明していますが、我が国とロシアとの対話の機会をふやし、平和条約の締結にも好影響を与え、我が国の長年の懸案であった北方領土問題の解決にも大いに貢献するものと歓迎をします。
 ただ、ここに来て、その対話の好機であるエリツィン大統領の訪日が一週間延期されることになりましたが、同大統領の健康状態などによりさらなる延期もあるのではないかと取りざたされています。
 私は、北海道出身の議員として、この成り行きに大いに関心を抱いている者の一人でありますが、橋本総理及び政府の姿勢は、この平和条約締結問題の進捗を大統領一人に余りにも頼り過ぎているのではないかと感じられます。もっと幅広くほかのロシアの政治家と協議を行い、全体としてこの問題を進めていく必要があるのではないでしょうか。総理の御見解をお伺いします。
 また、ビザなし交流の枠を拡大することを十日の閣議で決定し、ロシア人島民の理解をより得やすくするための環境整備として、九四年の北海道東方沖地震で受けた被害の救済に限っていた緊急人道支援を、ほかの災害にも拡大する方針で、近い将来実現するものと期待しております。その際、北方領土問題解決に向けどのように話し合われるおつもりなのか、総理の御所見をお伺いします。
 最後に、小渕外務大臣にお伺いします。
 ASEMの閣僚会合に出席された外務大臣は、その足でボスニア・ヘルツェゴビナを訪問されました。九月に予定されているボスニア統一選挙に日本から選挙監視要員を派遣する方針を表明されましたが、その規模と、自衛隊員派遣の有無についてお答えください。
 また、中央政府が地雷撤去のために近く設置を予定しているボスニア・ヘルツェゴビナ地雷センターへの資金援助についても表明されました。同地には、現在も約三百万個の地雷が埋設されていると言われています。これに関連して、昨年、外相の強いリーダーシップのもと、御自身の手で署名された対人地雷全面禁止条約は、いまだその承認のために国会に提出されていません。小渕外務大臣、いつごろ国会に提出されるおつもりですか。また、ほかの国の締結状況はどうなっていますか。
 さらに、署名式の演説で、普遍的かつ実効的な対人地雷の禁止を目指すため、ジュネーブ軍縮会議で早期に条約交渉を開始すべきだと述べられていますが、その後の同軍縮会議での進捗状況もあわせてお伺いします。
 以上、ASEMに関連する質問をさせていただきましたが、今回のASEMの主役の一人は、メンバーではないもののクリントン米国大統領ではなかったかとの報道もありました。そのクリントン大統領は、三日、日本の景気浮揚策について、大胆な対策をとる必要がある、日本のビジネス界も支持している方策に政府官僚は反対していると指摘した上で、橋本首相は勇気を持ってこの闘いを勝ち抜くと思うと総理にエールを送られました。
 他方、国際的な格付機関であるムーディーズは日本の国債の格付見通しを下方修正するなど、もはや世界の市場は橋本総理に不信任案を突きつけております。
 日本には、負けるが勝ちということわざがありますが、この際、総理は景気対策の手おくれの責任、それ以上に政策不況の責任をみずからおとりになり辞任をしていただくことで、総理の株も上がるものと思われますし、同時に日本株、円の下落も食いとめられると確信し、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕

内閣総理大臣(橋本龍太郎君)
 丸谷議員にお答えを申し上げます。
 まず、経済対策の誤りに関する新聞報道についてのお尋ね、そして日本経済が疲弊したのは政府の責任力不足と景気判断の誤りが原因という御指摘をいただきました。
 政府としては、その時々の経済情勢等に応じ適切な措置をとってきたところでありますし、現下の経済金融情勢に対しては、金融システム安定化対策や十年度税制改正など、財政、金融両面にわたる措置を講じております。また、与党の総合経済対策の基本方針については、政府としてはこれを重く受けとめて、必要に応じ大胆な措置をとっていく考えでありますが、今後とも、景気回復に向け責任を持って取り組んでまいりたいと思います。
 次に、ASEMにおける我が国のアジア支援策に対する評価について、評価されたのかというお尋ねがございましたが、評価はされました。そして、我が国が世界最大の資金協力を含む広範な協力を行ってきていることに対し、各国首脳から改めて高い評価が得られております。また、我が国の一連の内需拡大策や規制緩和の推進がアジア諸国の経済にも貢献することを説明しましたところ、各国首脳はこれを歓迎し、引き続き、こうした役割への期待を表明されました。
 次に、経済対策についての御質問がございました。
 私は、従来から、内外の経済金融情勢の変化に対応して臨機の措置をとるとは申し上げてきております。そして、このような考え方に沿って、与党三党による総合経済対策の基本方針を重く受けとめながら、政府としてどういう景気対策を打ち出すのかを真剣に考えているということを申し上げました。いずれにいたしましても、平成十年度予算を一日も早く成立をさせていただくことが、現時点において景気のため最大に必要なことであることは変わりがなく、御理解をお願いをしたいと思います。
 また、ASEMにおける我が国のリーダーシップについて御意見をいただきました。
 私は、ASEMをアジアと欧州の関係強化を図る重要な場と認識をしております。そして、今回の会合でも、アジア側の調整国の一つとしてアジア側首脳会合を主催するなど、アジアの共通認識の形成に努めてまいりました。今後とも、アジアに属し欧州との関係も深い日本の立場から、アジアと欧州の橋渡しの役を果たしていきます。
 次に、金大中大統領との会談に関し、北朝鮮政策についてお尋ねがありました。
 金大中大統領は、南北の平和共存のもとで対話と交流、協力を進めるという考えを持っておられ、北朝鮮が日本及び米国との関係を進めることも支持するが、南北関係の前進とともに行われる必要があるとの考え、そのように承知をいたしております。私は、南北関係の進展を期待し、北朝鮮との関係は、今後とも韓国と緊密に連絡をとりながら進めたいと考えております。
 次に、先般の自民党訪朝団についてお尋ねがございました。
 政府としては、よど号ハイジャック事件の犯人らが帰国した場合、法律に基づき厳正に措置すべきものと考えております。連絡事務所の設置は、国交正常化交渉が再開されれば、その中で検討されていくものと考えます。日朝関係につきましては、今後とも韓国などと緊密に連携しながら対処していく方針は、今申し上げたとおりであります。
 また、北朝鮮による拉致の疑いが持たれている事件について、我が国国民の生命の安全にかかわる重要な問題であるとの認識に立って、今後とも北朝鮮側の真剣な対応を求め、問題の解決に向けて最大限の努力を払う考えであります。
 次に、日ロ関係に関連し、平和条約締結問題の進捗をエリツィン大統領一人に頼り過ぎているのではないかという御指摘をいただきました。
 昨年十一月の私とエリツィン大統領との間のクラスノヤルスク合意を前進させるために、平和条約締結問題日ロ合同委員会が設置をされ、既に両国の外相の間でも交渉が行われております。政府としては、この委員会を含め、今後予定されている一連の要人往来の機会をも通じて、平和条約締結に向けて努力をしていきたいと考えております。
 次に、日ロ首脳会談についてのお尋ねがございましたが、次回の会談では、エリツィン大統領とくつろいだ雰囲気の中で胸襟を開いて話し合いながら、その信頼関係を一層強いものとしたいと考えております。そして、クラスノヤルスク合意を着実に具体化しながら、領土問題については、二〇〇〇年までに東京宣言に基づいて平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化するよう最大限努力をしたいと思います。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    
〔国務大臣小渕恵三君登壇〕

国務大臣(小渕恵三君)
 お答え申し上げます。
 三点のお尋ねがあったかと存じますが、まず最初に、ボスニアの選挙における選挙監視要員の派遣についてでございますが、ボスニア選挙につきましては、現在、その準備と実施に当たる欧州安全保障協力機構が、監視の方法、必要とされる要員の規模等につき計画を策定中でございます。我が国監視要員の規模と構成につきましては、その結果等を踏まえまして、自衛隊員の派遣の有無をも含めまして具体的に検討をいたしてまいりたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、我が国としては積極的に協力をしてまいりたいと思っております。
 次に、対人地雷全面禁止条約の国会提出の時期と各国の締結状況についてのお尋ねでございますが、我が国といたしましては、この条約の詳細な検討とあわせて、安全保障の確保や国内法制の整備等について現在検討を行っておるところでございまして、各国の締結の動きも考慮いたしまして、できる限り早くこの条約を国会に批准を求めたいと考えております。
 なお、条約発効のためには四十カ国の批准が必要でございまして、現在のところ、七カ国がこの条約を締結していると承知をいたしております。
 次に、軍縮会議についてでございますが、オタワ・プロセスを完結させなければならないという意味からも、この進捗について大変関心を深くいたしております。三月二十六日の会議におきまして、対人地雷禁止の交渉開始に向けまして、参加国間の見解を調整する特別調整者を任命することが決定をされました。我が国といたしましては、普遍的かつ実効的な禁止の実現のため、米国、ロシア、中国等も参加している軍縮会議におきまして、早期に条約交渉を開始すべく、関係国とともに、引き続き努力をしてまいりたいと思っております。(拍手)