衆議院・石炭対策特別委員会質疑録
1999年8月12日

高木委員長
 丸谷佳織君。

丸谷佳織
 公明党の丸谷佳織でございます。
 午前中から審議をお伺いしておりまして、なるべく重ならないようにというふうに思いますが、若干重複してくる点もあるかと思います。大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今回の答申を見させていただきまして、特に炭鉱の技術移転五カ年計画等、二〇〇二年度以降の石炭に関連します施策が出されたことは、大変に意義深い結論だというふうに思っております。また、特に、我が国のエネルギー政策の中で、海外炭の安定供給を確保する、あるいは将来のエネルギー危機を回避するという観点から、稼行炭鉱二鉱を存続させて、世界屈指の石炭の技術を海外に移転していくというこの重要性というのは、国際的な評価のみならず国内的にも必ず認知されていくものだというふうに確信をしているわけでございます。
 実際に現存します炭鉱地域の方々も、炭鉱が存続するということに関しまして一安心されているんじゃないかなというふうに思うのですが、二〇〇二年度以降の施策はありますものの、反面、二〇〇一年度で終了してしまう施策も実際にありますし、炭鉱技術の移転五カ年計画というのは、先ほども説明がありましたけれども、その五カ年の間で重点的に集中して技術を移転する事業だというふうになりますと、より長期的な俯瞰に立った石炭政策の展望というのを明示していく必要があるのではないかなと思っております。
 今回の答申の中にも、地域の自立的な発展に向けて、厳しい状況を認識しつつも、明るい展望を視野に入れて、地域の環境をとらえた柔軟な対応が必要であるという言葉があるのですけれども、いま一度大臣の方から、長期的な我が国の石炭政策の展望、明るい展望をぜひ示していただきたいと思います。

与謝野国務大臣
 石炭政策の難しさと申しますか、国民に御理解をしていただかなければならない点は、先ほども申し上げましたが、実際は日本はたくさんの石炭を消費をしているわけです。ただ、国民はその実感を持っておられない。石炭は専ら火力発電所と製鉄所で使われているということで、一般の我々の生活には余り直接関係のないところで使われておりますので、まず国民の石炭に対する認識というものをやはりもう一度深めていただきたいと私は個人的には思っております。
 石炭政策というのは、一つは、古くは雇用問題としてとらえられていたこともありますし、また、地域社会との関係でとらえられてきたこともありますし、戦後すぐというのはむしろエネルギーそのものとして、石炭、鉄鋼というのは、日本が持っているいろいろなリソースを傾斜的に配分していく対象であったわけでございます。
 今回の答申は、やはり従来の路線とは少し違いまして、いわゆる日本が持っている炭鉱技術の優秀な部分というものを海外に移転していこう。これは、採炭技術そのものと安全上の技術の両面にわたると私は思うのですが、採炭技術及び安全に関する、保安と呼んでおりますけれども、安全技術、この両面を海外に移転していこう、そのために日本の稼行炭鉱二つは存続の正当性があるという観点に私は立っております。
 当然ながら、稼行炭鉱二炭鉱は存続するということは、地域社会との関係においても大変いい関係になりますし、また、そこで働いている方々にとりましても雇用の場が確保されるということでもあるわけですが、正当性を国民に説明するためにはやはり、技術移転という大変国際的に貢献度の高い、そういう考え方で国民に御説明して御理解をいただく、これが多分答申の真髄なんだろうと私は思っております。

丸谷佳織
 午前中の審議の中でも、大臣の方から、国内炭鉱存続の根拠というのは我が国が持っている炭鉱に関する技術力にあるんだという御答弁があったと思うのですけれども、また、同様に先ほどから、国内炭と海外炭の価格差のお話が、それぞれの議員の皆さんされていたわけなんですけれども、二〇〇一年度末までに国内炭一万二千円以下を実現するということは、大変に厳しい経営努力、合理化を進めていかなければいけないんだというふうに思います。また、現在で、海外炭との価格差は三倍近い。将来的に一万二千円でも、単純に計算しますと約二倍の価格差になってきているわけですよね。
 ただ、先ほどから、海外炭におきましては、ほぼ価格が連動しています石油が現在値上がりをしているということ、また、低コストの露天掘りの方から坑内掘りの方へ世界的な流れが変わっていくであろう、環境面を考えて変わっていくであろうということ、そしてアジア地域自身も、石炭の需要がふえていくことによりまして自国のエネルギー危機を考えて輸出を控えていくのではないかということを考えますと、海外炭は今は底値であるということもあわせて国内炭を考えると、将来的にはその価格差が非常に小さくなっていくのでありましょうけれども、国の政策あるいは路線としまして、一万二千円以下、より低コストの国内炭にするための道筋というのをある程度示していかなければいけないのではないかなというふうに先ほど来の質疑を聞いていて思ったのですが、その点に関しましてはいかがでしょうか。

北畑政府委員
 まず、十年度の実績で現状を申し上げますと、電力会社に引き取っていただいている石炭の値段は、平均でトン当たり一万五千円でございます。これに対して、我が国に輸入されておる海外炭のCIF価格の平均が約五千円でございまして、現状、内外価格差は三倍という計算をしております。
 昨年来二年間にわたって議論をしている過程で、二炭鉱からは、平成十三年度末に一万二千円を切る水準まで合理化努力をする、こういう表明がございました。それから、このたびの答申では、さらに合理化努力を継続し、電力会社が引き取る価格のベースで、引き取り期間五カ年間の後半、始まりは平成十六年の十月ということになりますが、その時点で一万円を下回る、こういう価格引き下げの目標ができておるわけでございます。これは炭鉱にとっては大変厳しい目標であろうかと思いますけれども、労使一体となって効率化を進める、これは達成可能だというふうに考えております。
 もちろん、この合理化努力を支援するために、現在の石炭政策が残っております二年半、それから、技術移転五カ年計画を遂行するその後の五年間、政府はもちろん地方自治体と一緒になりまして、こういった合理化努力を側面から支援をしてまいりたいと考えております。

丸谷佳織
 では次に、炭鉱技術移転五カ年計画についてお伺いをしたいと思います。
 この中に、政府が一定の負担をするとした以外には、現時点では具体的なスキームが触れられていません。この政府の負担というのが実際にどのような形で国内炭の支援につながってくるのか。あるいは、現在実施されていますNEDO、JCOALの海外炭鉱技術者の受け入れと実際にどのような違いが出てくるのか。現時点で明らかになっている具体策がありましたら教えてください。

北畑政府委員
 JCOAL、財団法人石炭エネルギーセンターなどが現状実施しております研修との差を最初に御説明申し上げたいと思います。
 現在でも、二炭鉱で年間百七十名程度の研修生を受け入れておるわけでございますけれども、これは期間が一カ月程度でございます。また、対象者は、どちらかといいますと、将来炭鉱の幹部になられる方、あるいはそれぞれの政府の石炭行政担当者となられる方が中心でございます。
 これに対しまして、今後検討してまいります炭鉱技術移転五カ年計画におきましては、主として現場の炭鉱技術者を対象に、人数も大幅にふやし、研修期間も長期化をさせる。また、研修の内容といたしましては、採炭、掘進から選炭まで、炭鉱のあらゆる技術をオン・ザ・ジョブ・トレーニングの形で研修をする。まさに答申にもありますように、人から人に技術を伝えるという形での研修を考えておりまして、この点でこれまでの研修事業とは内容は大いに変わったものになるかと存じます。
 これに対する支援策については、十四年度以降でございますので、これから議論をするわけでございますけれども、こういった研修を実施する事業を助成すると同時に、それが炭鉱への支援、あるいは価格引き下げ努力への支援となるように知恵を絞ってまいりたいと考えております。

丸谷佳織
 では、続きまして、産炭地域の振興対策について何点かお伺いをしたいと思います。
 実際に、法失効後の激変緩和措置というものが答申に盛り込まれたことに対しまして高い評価をしているわけなんですが、八次政策以前の閉山による市町村に対しましては、激変緩和措置を適用することについて検討をすることが必要というふうにされています。今後、この適用の可否についてはどのような基準で検討をし、決定されていくのかという点をまずお伺いします。

北畑政府委員
 八次策前の対象市町村の選定につきましては、答申では、人口増加率、財政力指数、一人当たり工業出荷額、生活保護率、これらの指標が全国平均から著しく乖離しているという点が一点、それから過去の累積閉山量、閉山の規模の大きさという意味でございます、それから老朽炭鉱住宅の残存等、負の遺産が残っておる、こういったところを基準といたしまして選定をしていくというふうに答申で書かれております。具体的な基準はまだできておりませんけれども、この答申の趣旨に沿いまして、基準をつくり、対象の選定をしてまいりたいと考えております。

丸谷佳織
 実際に、北海道、特に空知の方で暮らしていらっしゃる方々からは、生活保護率あるいは老朽炭鉱住宅戸数要件の廃止等を望む声をお伺いしております。
 また、答申の、産炭地域の現状と振興対策の評価の項というのを読んでみますと、中空知圏域では人口の減少率が過疎地域の減少率を上回っている、また、財政力指数は過疎地域の平均を下回っているというふうに分析してあります。また、八次策・ポスト八次策影響市町村以外の六条市町村の中には、人口の増加率ですとか財政力指数、一人当たり工業出荷額、生活保護率のいずれの指標も過疎地域の平均値を下回るなど全国水準から著しく乖離をして、老朽炭鉱住宅の残存などから見て、経済活動の沈滞ですとか財政の窮迫が、閉山という特殊な要因によると特段認められる市町村があるというふうな分析がされているわけです。
 ここで指します市町村で生活している方と、そして、さきに述べました生活保護率、老朽炭鉱住宅戸数要件の廃止を望んでいる方々は重なっているんだろうというふうに思われますし、また、激変緩和措置の適用を検討されることになってくる地域の方々も、同様に重なっている地域の方々だというふうに思います。
 以上のことを踏まえまして、この適用基準というのが非常に大切になってくるのではないかというふうに思われます。特に、これは一つの基準ですから当然なんですけれども、客観的かつ地域の実情を確実に踏まえた的確で公正な判断というのが求められてくると思いますし、この基準に対しても今後十分に検討をしていただく必要性が高いと思うのですが、この点に関してはいかがでしょうか。

北畑政府委員
 適用基準につきましては、答申の趣旨に沿いまして、今後、関係の省庁、財政当局とも相談しながら、御指摘のような点を十分頭に置きまして検討してまいりたいと考えております。

丸谷佳織
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
 では、中核的事業主体についてお伺いしたいのですけれども、こちらの方も、法失効後においては、自立的な経済社会の構築に向けて中心的な役割を果たすように機能の拡充強化を図るべきというふうに答申に書かれています。これには、事業規模を増額するなど、国そして地方において所要の支援を実施するべきとなっておりますが、そうなると、基金増額などの財政的負担を伴うことになってくるのだろうというふうに思います。国としましては、どの程度の基金の増額を想定していらっしゃるのか、これが一点目です。
 また、地域の実情に応じた基金の事業活動の機動的かつ弾力的な実施というのもうたわれているわけなんですけれども、実際に地元の方々からは、基金の元金を取り崩してほしいといった意見を伺っておりますし、また、ある声では、空知二市六町については、六条地域でありながらも全国で唯一、基金の対象となっていないということを踏まえまして、新たな基金の別途造成といった要望も受けております。基金の事業活動の機動的かつ弾力的な実施という姿勢に対して非常に期待をしているところなんですが、政府の考えはいかがでしょうか。

北畑政府委員
 産炭法失効後の地元の自主的な産炭地域振興事業を実施していく主体として中核的事業主体の役割が重要だという点は、審議会でも非常に多くの方から御指摘をいただきました。
 また、それぞれ五十億円程度の規模の基金を使いまして事業をやっておるわけでございますが、御案内のような低金利のもとでは十分な事業ができないという御指摘も受けたところでございます。答申では、事業規模の増額ということで、基金について予算面の措置をしていかなければならないと考えておりますけれども、この金額につきましては今後の予算要求の過程で決めてまいりたい、こういうふうに考えております。
 それから、こういう低金利の状況では、むしろ元本の取り崩しを認めたらどうかという御意見があるのも委員御指摘のとおりでございまして、審議会でも同様の御指摘がございました。この点につきましては、財政当局と相談をしてまいりたいと思いますが、なかなか前例も少なくて難しい交渉になろうかと思いますが、努力をしてまいりたいと思っております。
 それから、空知地区の二市六町がこの基金の対象になっておらないという点につきましても、委員御指摘のとおりでございます。
 ただ、別途基金をつくるというのは、他の地域とのバランスから難しいかと存じます。現在対象になっております五市一町との関係の調整というのを、地元の市町村、北海道庁と相談をしてまいりたいと考えております。

丸谷佳織
 新たな支援ができないかどうかも含めまして、より弾力的な実施というのを望んでいく次第であります。
 次に、産炭地域振興対策におきましては、石炭鉱業の不況に起因する影響が是正されました後にはもちろん一般的な地域振興施策に転換されていくというふうになっているわけなんですけれども、実際には、八年を経過しようとしている産炭地域振興実施計画の三百五事業のうち、完了している事業はわずか三四%で、残る事業が六六%未完了という、依然として大変厳しい状況下にあることは間違いないのも事実であります。今回の答申の方針にこたえていくためにも、また、何といいましても産炭地域の復興のためにも、実施計画に関連する事業の先行的、そして重点的な実施に向けまして、予算枠の優先配分などが望まれますが、大臣はいかがお考えになるか、御所見をぜひお伺いします。

与謝野国務大臣
 通産省としては、産炭地域振興実施計画の実効性を確保するために、関係省庁、地方自治体等との緊密な連携を図りつつ、地方自治体への財政支援等から成る総合的な産炭地域振興対策を推進してきたところでございます。
 産炭地域振興対策の円滑な完了に向けて、産炭地域振興審議会及び石炭鉱業審議会の答申の内容を踏まえて所要の措置を講じる考え方であります。今後、関係各省庁等各方面との調整を進め、法期限に向けて、関係各省庁等との緊密な連携のもと、産炭地域振興実施計画に沿った各種施策の着実な実施に努めてまいります。
 もちろん、先生のおっしゃるような財政的な裏づけもまた必要であるわけです。

丸谷佳織
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
 では、最後の質問になるかと思いますけれども、空知地域でも今は、二十一世紀に向けまして新たな町づくり、そして町おこしに皆さんそれぞれ英知を出し合って懸命に取り組んでいらっしゃいます。例えば、三笠市というところでは湯けむり事業ですとか、あるいは芦別市の方は合宿の里構想などといいまして、それぞれの独自の発想で町の前進を図られているわけなんです。
 北海道内の産炭地域には不用炭鉱施設が現在千十八件も放置されているという現状があります。これらが地域の景観の整備ですとか新しい町づくりの障害になっているということは想像にかたくないというふうにも思います。ただし、これを除去するにはもちろん多額の資金というのが必要となってきますし、国の現行制度では対象とならないものも多いものですから、基盤整備不用施設除去等の調整額など産炭地域の振興臨時交付金制度などの、こちらは要件の緩和そして拡充というものが町づくりには必要不可欠となってくると思いますが、この点に関してはいかがですか。

北畑政府委員
 多数の不用炭鉱施設がなお残っておるということは、委員御指摘のとおりでございます。平成五年度から、産炭地域振興臨時交付金の中に産炭地域振興街づくり基盤整備不用施設除却等調整額という制度を新設いたしましてこのような支援をしてきたところでございまして、これまでも相応の成果を上げてきたものと考えております。残る石炭政策の期間に引き続き努力をしてまいりたいと思っております。
 要件緩和というのは、これは財政当局と調整をしてみますけれども、今までもなかなか実現をしておりませんで、御要望にこたえられない点がございますが、なお努力をいたしたいと存じます。

丸谷佳織
 その点に関してもよろしくお願いいたします。
 いずれにしましても、今回の答申の方向性の中で確実な施策の実施というのを図っていくために、優先的にすべきことを公正に判断をしていただいて思い切って実現をしていただく、そして地元の方、地域の方々の声に対しましてはより敏感に反応していただいて、繊細で手厚いケアをしていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。