衆議院・沖縄北方問題特別委員会質疑録
2000年11月15日

北村委員長
 次に、丸谷佳織君。

丸谷佳織
 おはようございます。参考人の皆様、公明党の丸谷佳織と申します。
 本日は、わざわざ当委員会まで足を運んでくださいまして、また、大変貴重な御意見を述べていただきましたことを、まずもって心から深く感謝申し上げます。
 また、本日、皆さんの御発言をお伺いしておりまして、実際に私たちの世代というのは戦争を体験したこともございませんし、また戦後というものも実感をしていない世代でありますけれども、本当に戦争の悲惨さというのを改めて、元島民の皆様の生活、そして島民二世の皆様の生活ぶりをお伺いしまして、感じました。改めて平和への誓いというのを決意する次第なんです。
 本日は、皆様の御答弁をいただくのも長時間にわたると思いますので、なるべく質問が重ならないようにとも思いますけれども、実際に私の方からは、この北方領土問題というのは北海道だけの問題ではないという視点と、また私たち、また次の世代にしっかりと引き継いで、認識をしていかなければいけないという視点から皆様それぞれお話をお伺いしたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 まず一点目なんですけれども、先ほど来お話が出ておりますけれども、ビザなし交流が平成四年に開始をしまして、平成十年まで、これまで延べ約五千人の相互交流が図られてまいりました。その中で、実際に、ある報道では、このビザなし交流のあり方がマンネリ化しているといったような批判もあるわけなんですけれども、このビザなし交流の現状を皆様の視点からまずお伺いしたいというふうに思います。
 まず、鈴木参考人にお話をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

鈴木参考人
 お答えをいたします。
 ビザなし交流につきましては、日ロの相互訪問によって、対話集会や施設の視察、スポーツ交流、さらにはホームステイ等、相互理解を深めようと一九九二年に開始され、今年度で九年目を迎えました。この交流の促進によりお互いの友好のきずなを深める環境づくりができたことは、大変よいことだと思っております。
 しかしながら、今日のビザなし交流は、友好親善が主となり、領土問題に対する理解を促進して領土返還に資するという本来の目的が多少薄れているのではというふうに感じております。当然友好を深めることは必要でありますが、九年を経過した今、これを契機に原点に立ち返って交流のあり方を検討することが必要でないかというふうに考えてございます。
 また、今後の交流を進めるに当たっては、元島民の高齢化に伴う日程の延長や、さらには交通手段に対する検討などが必要でないかというふうに思ってございます。
 また、先ほど来お話し申し上げましたとおり、言葉が通じないことから真の交流ができていない状況にあることも現実であり、このためにも、ぜひ隣接地域に対してロシア語の専門職を配置していただくなど、地域でのロシア語の充実を図ることによってさらに一層の交流促進が図られるものというふうに考えておりますので、御支援を賜りたいと存じます。
 以上でございます。

丸谷佳織
 続きまして、小泉参考人にお話をお伺いしたいと思います。
 今、ビザなし交流の現状も鈴木参考人からお話しをいただきましたけれども、小泉参考人も、元島民の皆様とロシアとの間での民間外交を日ごろ推進している立場でいらっしゃるというふうにお伺いをしておりますが、この現状についてお話しを願います。

小泉参考人
 お答えいたします。
 私どもは、これまで、領土返還への環境整備の一環といたしまして、ロシアの人々に北方領土問題に対する正しい歴史的事実の認識を深めていただき、また相互理解を深めるため、ビザなし交流などに参加をいたしております。また、例年一月に行われます北方四島交流代表者間協議の機会に、元島民代表が、代表者間協議に出席された四島現島民との懇談を行い、島民同士の立場から、領土問題を初めとする各種の問題について話し合いを行っております。元島民等による自由訪問の機会をとらえ、現地に居住する島民の方と交流をいたしたいと考えているところでございます。
 領土問題に対する理解というのは容易なことでは進まないものとは考えますけれども、今後とも、北方墓参、ビザなし訪問あるいは自由訪問事業等につきまして積極的に取り組んでまいり、領土返還に資するための環境整備に努める、このような姿勢で臨んでまいりたいと思います。
 終わります。

丸谷佳織
 どうもありがとうございました。
 先ほどの意見陳述の中にありましたが、元島民のお一人としましてロシアに対してももちろんいろいろな御感情がありますでしょうし、その中でロシアと元島民の皆様との民間外交ということで努力されていることに本当に心から敬意を表させていただきたいというふうに思います。
 続いて、藤原参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、今お二人にビザなし交流の現状をお伺いした上で、藤原市長にもお話しを願いたいと思うんです。
 実際に、もちろんこの北方領土問題、政治的な決着をつけていくことは当然ですけれども、その前提ともなります人的な交流、また日本国民とロシア国民との心の交流というものも非常に必要だなというふうに今の御答弁をお伺いして思った次第なんです。
 その上で、ロシア語教育のお話が先ほど来出ております。この点について、お感じになっていることで結構ですけれども、お話しを願いたいというふうに思うんですね。
 実際にロシア語ができる専門職員を配置する、そしてロシア語の通訳をお願いして交流を進めていくと同時に、現地の皆様がロシア語を自分たちで使って会話をできるというふうになると、またもっと交流の活性化が図られるのかなというふうに思います。この現地の皆様のロシア語教育の必要性についてお感じになっていることがあれば、また今推進されていることがあれば、わかる範囲で結構ですが、お話を願いたいと思います。

藤原参考人
 丸谷議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、ビザなし交流についてでありますが、平成四年から始まりましたこのビザなし訪問、現在までで双方で計百六十回、七千六百二十六人の方々が交流されているわけでございます。
 ビザなし交流では、毎回対話集会を柱といたしまして、ホームステイやホームビジットが用意されております。これらのプログラムを通じて相互に対話を重ねることによりまして、総体的に四島住民の領土問題に対する理解は従前よりは次第に深まっており、領土問題解決の環境整備に寄与しているものというふうに私は認識しておりますが、最近、元島民や返還運動関係者からは、相互交流における日ロの費用負担が公平でないとか、あるいはロシア訪問団がなぜ九州まで行かなければならないのかというような意見も出されております。私は、ビザなし交流のあり方についても、見直すべき時期に来ているのではないかというふうに思っております。
 また、文化交流につきましても、ビザなし交流の枠内で専門家交流が実施されておりまして、学術分野や教育分野、農業分野での交流や、音楽や絵画といった芸術分野での交流が実施されております。また、本年度におきましては、北方領土隣接地域の住民レベルでも、コーラスや和太鼓等の市民団体が訪問し、交流を深め、相互理解に努めているところでございます。
 ロシア語教育についてのお尋ねでありますが、私は、根室市内においてはロシア語教育が今盛んに行われているというふうに認識しております。根室西高等学校では、ロシアから、現在は女の先生でございますけれども一名招聘いたしまして、選択科目ではありますけれども、ロシア語講座を開いております。また、民間におきましても、根室市には年間千七百隻以上のロシア貿易船が入港するわけでございまして、二万四千人以上の乗組員が上陸いたします。そうした関係等もありまして、根室市内の商店にはロシア人が店員として数名働いているような状況でございまして、民間においても、ロシア語講座、これは有料でございますけれども、そういったロシア語講座等も開いております。
 いずれにいたしましても、根室市内におきましては、ロシア語教育というのはかなり進んでいるのではないかというふうに自負しております。
 以上です。

丸谷佳織
 ありがとうございました。
 今藤原根室市長さんがおっしゃってくださいました。根室市内においては非常にロシア語教育が進んでいらっしゃるということなのですけれども、国の方も一層、根室からロシア語教育の輪が広がっていけるような、また実際により多くの皆さんが教育を受けられるような支援の方も考えていかなければいけないなというふうに思いました。
 続きまして、関連してなのですけれども、鈴木参考人にお伺いをしたいと思うのですが、今いろいろお伺いしてきました地元の皆さんのさまざまな御努力、これを本当に日本全体で担っていかなければいけない問題だというふうに思っておりますし、また冒頭にも述べましたように、これは決して北海道だけの問題ではないというところを若い世代にもしっかりと認知をしていただくためには、やはり北方領土返還への世論を喚起していかなければいけないというような課題があるかというふうに思うのですけれども、鈴木参考人は、この世論喚起のための課題ということで、例えばどんなお考えをお持ちになっていらっしゃるか。また、例えば現場の知恵で、こういったことをすればもっと世論が広まっていくのだというようなお考えがありましたら、ぜひお聞かせ願いたいというふうに思います。

鈴木参考人
 お答えをいたします。
 北方領土返還運動は、元島民を中心に、後継者、二世、三世により、さまざまな機会を通じて実施してきております。しかしながら、国内における北方領土に対する意識は、隣接地域に住む者との温度差があることは当然でありますが、特に戦後生まれの方々は意識が薄いと感じております。
 今後の世論喚起を促進するためには、全国的に、北方領土の歴史的背景や地理的部分を教育課程においてより具体的に指導する必要があると感じております。このためにも、北方領土学習の充実を図られるようお願いを申し上げる次第でございますが、具体的に申しますと、教材のビデオなどを全国の教育委員会を通じ各学校に配付し、総合学習の場で学習させていくなど、さらには、教師の研修も強化を図っていただきたいと考えてございます。また、ビザなしには多くの教師を参加させて北方領土学習の研修の場とできるようにするなど、そんなことの配慮もしていただきたいと考えてございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 以上でございます。

丸谷佳織
 御提案、どうもありがとうございました。
 続いてなんですけれども、鈴木参考人にまたお伺いをしたいというふうに思うのです。
 御意見をいただきました中に、根室海峡での漁業の現状、非常に御苦労されている点が多いというふうにお伺いをしているのですけれども、こういったことをもう少し詳しくお話をお願いします。

鈴木参考人
 お答えをいたします。
 根室海峡におきましては、一九八八年から繰り返されているロシア・トロール漁船の操業によりまして、当時七万トンから十万トンの水揚げをしておりましたスケソウダラは、一九九二年以降、急激な資源の減少があらわれました。その後は、回復の兆しもなく、一万五千トンまで落ち込んだことから、スケトウダラ漁船百七十七隻での経営は到底成り立たなくなり、このことに起因をいたしまして一九九六年から五十隻の自主減船に踏み切り、さらには、漁業の廃業という苦渋の選択を強いられております。この自主減船により、残存船百二十七隻は減船補償十二億四千万円の借財を抱えての再スタートとなったものであります。
 一方では、日ロの合意に基づきまして、北方四島周辺海域安全操業が実施されておりますが、本海域は漁場の競合を避けることのできない狭隘な漁場でありまして、これまでも安全操業船の刺し網漁具がトロール船にかき回されて紛失をしたり、破網などの被害が発生をしております。これによりまして多額の損害をこうむっております。
 本町におきましても、禁漁区の設定など、資源確保対策を講じながら操業を続けておりますが、この繰り返されるトロール船の操業は漁民の感情を逆なでする行為であり、断じて容認できるものではありません。このようなことから、資源確保と安全操業の見地から、本海域でのロシア連邦トロール漁船の操業を直ちに停止してくださるよう特段の御高配を賜りたく、お願いを申し上げる次第でございます。
 以上です。

丸谷佳織
 どうもありがとうございました。
 本日は、大変貴重な御意見をお伺いしまして、また、先ほど来続いております質疑の中で大変感じますことは、今、最後に鈴木参考人もおっしゃってくださいましたことに関連してくると思うのですが、豊かな水産資源、これをしっかり守っていく、また、増大をさせていくために必要である北方領土隣接地域振興等基金、これのしっかりとした確保、また予算立て、先ほど来お話に出ております残置財産の状況の把握というのにしっかり取り組んでいかなければいけないなという点です。
 本年五月に、続総務庁長官が北方領土視察のために根室を訪れまして、四島返還を想定した上で、元島民の土地画定作業を後押しするために、本年度より高精度の衛星写真を利用することにはなっておりますけれども、今後も、しっかりとしたこういった動きをしていかなければいけないという点。
 またもう一点、本日重点にお伺いをしました民間交流という視点では、ビザなし交流のあり方、目的の明確化と内容の充実、そしてロシア語教育、また、教育の場での教師の皆さんへの北方領土問題への認識というのをしっかりと深めていくために、本委員会でもしっかりと取り組まさせていただきたいというお誓いを申し上げて、私からの質問を終わらせていただきます。
 参考人の皆さん、本当にありがとうございました。