衆議院・農林水産委員会質疑録
2000年9月29日

宮路委員長
 次に、丸谷佳織君。

丸谷佳織
 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今回の総合的な緊急米対策につきまして、高く評価をさせていただきたいというふうに思います。
 きょうの私の質問は、農家の方々が今回の緊急の米対策によって、何だまた減反か、こういった失望感を抱いていただかないように、また、最近、一部都市部で起こりがちな、いたずらな、なぜ農業だけに多額のお金を使わなければいけないのか、こういった短絡的な批判をいただかないようにという観点から質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 今回、この緊急の米対策の全貌を見てみますと、どうやって備蓄米を減らしていくのか、余剰米に対してどのような対処をしていくのかというところが入り口論になっているようにも思うわけなんですけれども、実際に計画を上回って残っている在庫を処理しなければ、当然米価が安定しないということですから、どう減らしていくのかということが重要だということは十分理解できるのですが、農業に従事をしていらっしゃる方々にやはり一番感じていただきたいのは、意欲的に希望を持って生産できるような環境づくりをするため、このことを最重要課題としてとった緊急対策だというようなことをまず実感していただかなければいけないというふうにも思います。
 この点におきまして、今回の対策が農業に従事していらっしゃる皆さんに与えるインパクトと申しますか実際の効果について、総括政務次官はどうお考えになるのか、この点をまずお伺いします。

石破政務次官
 御評価をいただきまして心から厚く御礼を申し上げます。
 るる申し述べてまいりましたが、要は、米が下がらない、ずっと暴落基調が続いてきたわけでありますが、これから先、これ以上下がらない、そしてまた、稲作経営の充実等によりまして、仮に下がった場合も所得は確保する、こういうような二つの構造になっておるわけでございます。この二つのことによりまして、生産者の方々に、もうだめなんだ、これ以上やってもいかぬのだという気持ちを与えない、そのことが一番重要ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。
 かてて加えまして、これから先、担い手というものを中心にして、そういう方々に意欲を持っていただきたい。はっきり申し上げまして、二反とか三反でやっておられる方々は、ある意味、かなり値段が落ちてまいりましても、生産費が償えないようなことになりましても、それが収入の大宗を占めておるわけではございません。農地を保全なさるとか、土地を管理なさるとか、あるいは生きがいでなさるとか、ある意味、コストを無視したという方々もある規模以下になればそれはあるわけでございます。そういう方々と、そしてまた、本当に意欲的に規模拡大をしていこうと思われる方々、それに対します施策は当然別であるべきでございます。特に北海道なんかはそうではなかろうかと思いますが、意欲的に専業的にやっていらっしゃる方々に絶望感を決して与えてはならず、希望を持っていただけるような対策にしたつもりでございます。

丸谷佳織
 今まで本委員会でなされてきました質疑録というのも今回しっかり読ませていただきまして、平成六年から連続して全国的な豊作に伴い、米の持ち越し在庫量というのは大幅に増加をしてきて、価格の低迷というのが続いてきている、さまざまな施策をとられてきたわけなんですけれども、本当に今回の対策で余剰米というのが計画どおりに適正量に是正されていくのか。この実効性の確保というのを、もう一度力強い御答弁をいただきたいというふうに思います。

石破政務次官
 私どもとして可能な限りの対策を打ってまいりましたので、この実効性というものは必ず上がるというふうに確信をいたしておる次第でございます。

丸谷佳織
 この緊急対策に対します方向性というのは理解させていただきました。
 実際に農家の方々が直面する問題といいますのは、米の価格の問題、そして所得の安定の問題であろうというふうに思います。北海道のある農業団体の方がこの間こちらの方に陳情にいらっしゃいまして、お話をお伺いしたところ、北海道で調査をしました水稲における経営では、所得の中から減価償却費ですとか土地改良費などを差し引きますと、年間百万円ほどにしかならない、非常に経営が厳しいというお話をお伺いしました。
 政務次官もおっしゃってくださいましたけれども、北海道というのは専業農家が非常に多うございまして、四七・七%という比率です。また、北海道では大規模農業化というのを積極的に推進しまして、稲作においても、高品質なお米を低価格で安定的に供給できるようにということで、農業者の方は大変な努力をしていらっしゃいます。
 こういった農業に従事していらっしゃる方々にとって、先ほどの年収もあわせて、価格の下落というのは本当に死活問題であるというふうに言えると思います。大規模で効率的な農業を目指すためには、価格、そして所得の安定をイの一番に図っていかなければいけないと思いますが、この点についていかがお考えになるか、お伺いします。

石破政務次官
 これは新しい農業基本法の理念でもあり、食糧法の理念でもございますが、要するに、一言で申し上げれば、価格政策から所得政策への転換ということなんだろうと思っております。
 今まで農家の方々の所得というものは、消費者の御負担において、ある意味、高い価格に誘導することによって所得を確保するということでございました。しかしながら、それでは構造改善が進まないとか、消費者に負担を押しつけるのかとか、国際的に見てどうなのかとか、そういうような御批判もございます。それは正鵠を射ておる部分も相当ございます。
 そういたしますと、所得の確保というものは、価格を高く維持することよりも、それは国民皆様方の御負担によりまして、財政支出によりまして所得政策というものをやっていこう。価格政策から所得政策というのはそういう意味ではなかろうか。今回のいろいろな措置も、そのことを念頭に置きながら講ぜられておるものだというふうに思っております。
 あわせまして、委員が冒頭御指摘なさいましたように、都市部におきまして、ある意味、誤解に基づく、いわれなきとは申しません、誤解に基づきます農政批判というものはあろうかというふうに思っております。昨日、予算委員会におきましても、私ども農林省がやっております公共事業についてのいろいろな批判的な御見解を開陳された委員もいらっしゃいました。
 しかしながら、例えば公共事業、基盤整備、そういうものがなぜあのように高い補助率が行われておるのかということを考えました場合に、高補助率のゆえんというものは、それによって規模拡大が行われ、コストが下がることによって、消費者の皆様方が安い農産物を享受することができるということは事実としてあるわけでございます。
 それは何のために行うかといえば、生産者のためというよりも消費者のためという面も多い。生産者の側からしますと、どんどんコストを下げていってもちっとも手取りはふえないじゃないのというような思いもあるわけでございます。これは価格政策においてもそうでございますし、公共事業においてもそうでございますが、都市部と農村部がどっちが得したとか損したとか言っておっても、ちっとも国のためにもなりませんし、国民の福祉の向上にもなりません。その辺の実のある御理解というものを、また御質疑を通していただければ大変幸甚に存じます。

丸谷佳織
 そうしますと、生産者の所得安定に向けた施策というのは大変大事だということなんですけれども、実際、今、年間の所得が低いということで陳情にいらっしゃるような方々に対して私から申し上げるべきことは、現在は価格政策から所得政策への移行時期であるというような御説明をすればいいという認識でよろしいですか。

石破政務次官
 これは多くの皆様方、もちろん議会も含めまして御論議をいただきながら、今のところ、いろいろな対策をそれぞれの品目について講じておりますが、これをさらに体系立ったものにしていきたい。その移行期だというふうに御理解をいただいてよろしかろうかと存じます。
 ただ、そこにおいて必要なのは、繰り返しになりますが、再生産の確保ということもございますけれども、どういう方々の所得を確保していくのかということ、そしてまた、だれの負担においてそれを行うのかということ、そのような視点が必要ではなかろうかと思っております。
 委員御指摘のように、本当に専業で頑張っておられる方の所得というのは絶対に確保していかねばならないが、価格が下落をすることによって真っ先に打撃を受けるのはそういう方々であるという認識を強く持っておる次第でございます。

丸谷佳織
 政策の過渡期ということでも所得の安定は最重要課題でございますので、今の総括政務次官がおっしゃいましたような根本的な立場から、急いでまた施策のつくり上げというのをやっていただきたいというふうに思います。
 私は、十五分という短い時間で最後の質問をしなければいけないわけなんですけれども、WTOについてお伺いしたいというふうに思います。
 実際、我が国の農政は、国内の食料自給率の向上という一面と、また国際貿易の中での自由化というはざまにおいて、本当に明確な行方が示し切れていないというジレンマも実際に抱えているのではないかというふうに私は思います。とりわけ、WTOの農業交渉におきましては、加盟国は根本的な解決をもたらすように、助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減するという目標を掲げまして、一層の自由化というものが進んできている。また一方、国内におきましては、食料・農業・農村基本法に自給率向上というものを掲げまして、しかしながら、ミニマムアクセス米は本年度で三百七十一万トンにも上って、私たちの農政を圧迫しているというのが現状であります。
 私たちの日本は、先進国の一員としまして、WTOの精神というのは推進していく立場にはあると思いますが、このWTOの農業協定の議論においては、各国の食料自給率の確保ということをより積極的に主張していくべきではないかというふうに思います。この点について総括政務次官にお伺いします。
 また、外務省にお伺いしますけれども、新ラウンドの交渉の開始というのはまだ決まっておりませんが、ウルグアイ・ラウンドにおいては、ことしからの交渉開始が決まっていました農業分野、そしてサービス貿易について既に交渉が始まっております。しかし、これらについては、米国側に有利な分野のみを先行させていこうというような動きがあるのではないかというふうにも思いますし、さまざまな駆け引きが予想されます国際舞台での交渉においては、すべての分野について包括的な交渉を行うべきであるというふうに思いますが、どのような態度で臨んでいかれるのか、この点、最後にお伺いします。

石破政務次官
 WTO次期交渉におきましては、私どもは、農業の持ちます多面的機能とあわせまして食料安全保障、それはケアンズの諸国が主張しておりますように、いいんだ、地球じゅうの食料安全保障はケアンズが担うから、何も日本が安全保障なんて考える必要はないんだという御主張ではなくて、やはりそれぞれの国が安全保障、いろいろな国にいろいろな農業があるべきだ、いろいろに条件は違うわけですから、その主張。つまり、食料安全保障という言葉も、同じ言葉なんだ、フードセキュリティーという言葉なんだが、我々日本が考えておりますフードセキュリティーと、ケアンズが考えているフードセキュリティーと、EUが考えているそれと、アメリカが考えているあれと、同床異夢みたいな形で全部違うわけですね。
 日本の主張を本当にきちんと明確にしながら各国の御理解を得てまいりたい、そのように考えております。

田中政府参考人
 委員御指摘のとおり、WTOの新しいラウンドはまだ立ち上がっていないということ、それから、農業、サービスにつきましては、合意済みの課題として本年の一月から交渉が始まっているということは御指摘のとおりでございます。
 一方、各国、多分共通の理解として、新しいラウンドが立ち上がらなければ農業、サービスの交渉も円滑に進まないということであろうと思いますし、私どもといたしましては、関係国の幅広い関心に答えられるような、市場アクセスのみならず、ルールの策定といったことも含めた幅広い課題を有する新しいラウンドの早期立ち上げに努力してまいりたい、こういうふうに考えております。

丸谷佳織
 以上です。ありがとうございました。