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衆議院・農林水産委員会質疑録 |
2000年11月30日 |
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宮路委員長 次に、丸谷佳織君。 丸谷佳織 公明党の丸谷佳織でございます。 本日の委員会のテーマの中心でありますWTOについて、我が国の農業政策が、日本国内における食料自給率の向上という問題と、国際間の貿易の自由化とのはざまでどのように明確な路線を示していけるのか。また、先進国の一員として、WTOの精神の推進を図りながら、どのような基準で今後、世界を取り仕切っていこうとしているのか。これらの観点から幾つか質問をさせていただきます。 質問通告をさせていただきました順序がちょっと変わりますが、その点よろしくお願いいたします。 まず、農業の多面的機能について質問をさせていただきたいというふうに思うわけなのですけれども、我が国はWTOの議論におきまして、農業が有している多面的機能、すなわち、農業が生産活動に伴って農作物以外のさまざまな有形、無形の価値をつくり出す経済活動であるということを明記しています。 具体的には、まず一つとして環境の保全、そして二番目が地域社会の維持活性化、そして三番目が食料安全保障、この三点に整理されていますけれども、我が国が強く主張しております農業の多面的機能について理解を示している国も徐々にふえてきているという認識を持っておりますが、この多面的機能という文言自体について、ケアンズ・グループの方からは、概念規定が明確ではないですとか、貿易歪曲的な措置として利用されるおそれがあるといった意見も出されているというふうにお伺いをしております。 一方、日本のほかEUですとかスイス、ノルウェー、韓国といった国、地域ではほぼ共通した認識がされているようにも思いますけれども、若干ニュアンスに違いがあるようにも思えます。EUの方では、食品の品質あるいは安全性や動物愛護もこの多面的機能に含めようとしている動きの中、今後、我が国がこの農業の多面的機能について各国の理解を得ようとしていくためには、さらなる働きかけというのが必要になってくるのでしょうが、その際に、具体的な内容というのを明らかにしていくことが必要なのではないかというふうに思います。 現在、OECDなどで検討作業が進められているこの多面的機能についての検討状況と、我が国の取り組みについて、まずお伺いしたいと思います。 石破政務次官 お答え申し上げます。 多面的機能とはかくのごとしというきちっとした定義があって、多面的というのはABCDEFG、こういうのが多面的ですよということはまだ確定できたとは思っておりませんし、委員御指摘のように、各国それぞれ少しずつ認識の差はあるのですね。 御指摘のように、OECDで、その中に農業委員会というのがあるわけでございますが、そこで今まで検討作業をやってまいりました。一昨年、一九九八年三月の農業大臣会合の合意を受けまして、多面的機能とは何ぞやという検討を開始いたしております。これは、直訳調で余りいい言葉だとは思いませんが、多面的機能というのは何かといえば、農業生産と密接不可分につくり出される価格に反映できない機能だ、こういうような作業上の定義を設けさせていただいております。つまり、とにかく農業生産とは密接不可分ですよ、そして価格には反映できませんよ、そういうようなものですという定義を設けまして、これに従いまして内容や概念の整理をやっておるところでございます。私どもといたしましては、なるべく早くそれに基づいた共通認識が形成をされますように、EUでありますとか韓国でありますとか、そういう国と共同しながら積極的に議論に参加をいたしたい。 いずれにいたしましても、個々の概念をきちんと整理することが私どもが交渉に臨む際において必要なことであろう、このように考えておる次第でございます。 丸谷佳織 ありがとうございました。 政務次官の御説明をお伺いしましてちょっとお伺いしたいのですけれども、価格に反映できないものだというふうな、今、ある程度の共通の認識の上に立っての議論が国際交渉の場でなされているというふうに理解をしましたが、例えば環境保全に関しては、EUの方では、緑の政策の中で環境保全をするような地域について支給金を出しているというような例がありますね。こういったことは、例えば農業の持つ多面的機能を重視した政策ですとかそういうふうな考え方はできるのでしょうか、できないのでしょうか。 石破政務次官 まさしくそういうことであろうというふうに思っております。 委員御案内のとおり、我が国は、条件不利地域に対します直接支払いというのをやっております。その場合には、町村で条件有利なところと不利なところと、コストの差を上限としてという組み立てをいたしておりまして、そこにはもちろん含意としてはあるわけですが、環境保全という概念で、それによって直接支払いをまだ行っておるわけではございません。 まさしく今委員御指摘のような点で、どういう形でそういう環境保全というものに対して、国民皆様の御理解を得ながらサポートしていくかというような議論を深めてまいりたいと思っておる次第でございます。 丸谷佳織 ありがとうございました。 諸外国に農業の多面的機能の重要性というのを主張していくに当たって、我が国国内においても、多面的機能を重視した施策というのは今後重要になってくるのだろうというふうに思います。 今挙がりましたけれども、環境保全という面でいえば、環境保全型農業に位置づけられています有機農業、昨年の通常国会においては持続的農業法というのが制定されまして、JAS法の改正を行い、有機農産物のJAS表示と認証制度というのを実施することになっていますけれども、JAS表示は、農産物全体の中でも有機農産物及び特別栽培農産物の表示というのを行うだけで、それ以外の持続性の高い農業生産方式、いわゆる環境保全型農業により生産されたような農産物についての位置づけというのはまだなされていないというふうに認識をしております。 今後、環境に限らず、それぞれの農業方式に対する、営農面に対する支援策、あるいは流通、消費面での支援策というのを総合的に我が国として確立していく必要があるのではないかと今後の課題として思うわけですが、この点についてはいかがでしょうか。 竹中政府参考人 農業の多面的な機能の確保のための施策でございますが、農業の多面的な機能というものは、それだけ切り離して確保されるというものではなくて、先ほど総括政務次官からの御説明もございましたけれども、農村という地域で農業生産活動が継続的に行われることによって初めて発揮される、確保されるというものであると考えております。 したがいまして、多面的機能の十分な発揮のためには、農業の持続的な発展と、その基盤であります農村の振興を図るための施策を進めていくということが重要であると考えております。 具体的には、委員からもお話がございましたが、農業の持続的な発展を図るために、環境との調和にも配慮しました生産基盤の整備とか、農地の利用集積等による経営基盤の強化のための施策、また農業が本来有しております自然循環機能の維持増進を図っていくための施策、こういった施策を講じますとともに、基盤である農村の振興を図ってまいりますために、生産と生活基盤が一体となったような総合的な農村整備などを進めることによりまして、景観にすぐれて豊かで住みよい農村づくりを進めるとか、また、先ほどもお話にございましたが、中山間地域の条件不利地域におきまして、耕作放棄を防止しながら多面的機能の確保を図るというような見地からの直接支払い等の措置を講じることにしているところでございます。 丸谷佳織 今後の方向性としまして、今御説明いただきましたけれども、中山間地域の直接支払いは条件不利地域ということで今支払いがされているわけなんですが、例えばEUのような環境対策の意味を含めた支払いになりますと、これは条件不利地域というようなくくりではないですし、平地に対する直接支払いというものも考えていかなければいけないでしょう。また、食料・農業・農村基本計画の中でも「農業生産に係る環境面に関連した施策の在り方について、諸外国における動向、今後の国際規律の動向等を踏まえながら検討を行う。」というふうに書かれておりますので、今後、今申し上げたような点で、多面的機能を考える際の政府の助成的な介入、これは何に対してサポートするかといいますと、サポートというのは補助金というのを典型的なものとして考えての話なんですけれども、作物や地域というのをターゲットにしてぜひ考えていただきたいというふうに要望をさせていただきたいと思います。 次の質問に移らせていただきます。 WTOに向けて日本の提案をまとめる際に、いろいろな方から、また農業の生産団体の方からもいろいろな御要望をいただいたわけなんですが、特に農業に従事されている方々は、この交渉の行方によりましては直接その仕事に影響が出てくるわけですから、非常に大きな関心を持って見守っているとともに、交渉の提案づくりにも国民総意のもとで行ってほしい、交渉に当たっては情報公開を図りながら国民と一体となって行ってほしいとの要望の声がありました。 石破政務次官からの御説明の中にもEメールなどを利用した旨の御説明がありましたけれども、この点について開かれた交渉、国民とともに交渉の提案をつくっていただきたいという要望にどのような形でおこたえになったのか、この点についてお伺いします。 石原政府参考人 委員からお話がございましたように、今回の交渉提案を取りまとめるに当たりまして、国民各界各層の御参加をいただくということで、農林水産省はいろいろな努力をしてきたところでございます。 先ほどもお話がございましたが、農林水産省が昨年来開設しておりますWTO農業交渉ホームページを活用したEメールでの意見募集、投書、それから地方農政局単位で御意見を聞く会というのを開催いたしまして、意見募集を行っております。また、ことしの七月には、総理府に農産物貿易に関する世論調査というのを実施していただきまして、農産物貿易政策に対する国民の意識を調査したということでございます。さらに、十月末から十一月下旬までの間に、今回の提案の基本的な方向を示しながら、第二次の意見募集を行った。そして最後に、以上以外にも、消費者団体やNGOの方々と随時意見交換をやって意見募集をしてきたということでございます。 このようなプロセスを経て我々、いろいろな御意見をちょうだいしたわけでございますけれども、そういう御意見を踏まえまして今回の提案をつくり上げていくということで、具体的には、農業の多面的機能や食料安全保障の重要性、昨年来、我が国が強く主張してきております交渉の基本的考え方を国民各界各層の御意見に裏打ちされたものとして、次の交渉にはそれを強く打ち出していくということを考えているところでございます。 丸谷佳織 今までにない多くの声を恐らくEメールですとかITの活用によって吸収をしていただいて、提案に反映させていただけるものだというふうに思うわけなんですけれども、実際に日本の国民が自分たちが一緒につくり上げたWTOの提案なんだという実感を抱くまでには、まだ若干いろいろな方法をとっていかなければいけないのかなという気もしているわけなんです。今後も、関心のない方も恐らくいるのかもしれないんですけれども、うまくメディアを活用する等、利用をしていただいて、それこそIT時代に即した、本当の意味で国民がいろいろな議論を自分たちも重ねながら、日本の提案について参加したのだと実感できる形がとれるような取り組みもしていただきたいというふうに思います。 国際交渉ですから、すべてが情報公開、筒抜けでということにもならないのかなというふうに思うんですが、この交渉に臨む基本姿勢についてお尋ねしたいと思うんです。 基本目標であります各国の多様な農業の共存については、多角的な視点から取り組んでいかなければいけないのだろうというふうに思っております。例えば、各国の多様な農業というのは、当然多様な歴史があるわけで、大きく分けますと、新大陸型と旧大陸型の農業があるというふうに言われています。我が国は旧大陸型であり、ほかにはイギリスですとかEU、韓国、中国等で、一方、新大陸型というのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドぐらいであるというふうに言われています。 この新大陸型、旧大陸型、どういうふうに分かれるかといいますと、もう御存じの皆さんも多いと思うので、重ねて失礼になるかと思いますが、新大陸型というのは、近代的になった人間が、白いキャンバス地に絵を描くように、その能力に応じて農地を囲って、農場をつくっていった農業であるというのに反しまして、旧大陸型というのは、我が国のように、農業社会というものの中から近代的な人間が育ってきて、近代的な農業をしようとしたときには既に農地は昔ながらの農民の手によって使われていた、だから、農業を進めていく上においては、自然条件の不利を克服して限界地と考えられていた地域まで一生懸命農地を切り開いていったというふうに言われています。 現在、ケアンズ・グループを見てみますと、アメリカが約百七十ヘクタール、そしてオーストラリアでは四千ヘクタールもの大規模農業を営んでいるのに対し、EUなどでもせいぜい数十ヘクタール、そして、日本ではもっと小さな規模での営農となっているのは、こうした歴史的な背景というものももちろん否定できないわけです。ただ、ケアンズ・グループというものを考えたときに、ケアンズ・グループの中でも大規模で行っている国というのはそれほど多くない。ケアンズ・グループの中でも小規模営農の国があるわけですから、こういった視点を国際交渉においてもっと明確にしていくことで、これまでの多面的機能フレンズ国あるいは地域間の連携に加えて、日本の提案に賛同してくれる多数派というのをつくっていけるのではないかというふうに思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。 石破政務次官 全く委員の御指摘のとおりであろうと思っております。アメリカがあってEUがあってケアンズがあってというような画一的な分け方ではなくて、ケアンズの中にも私どもの主張を理解してくれる国はたくさんあるだろうというふうに思っております。前回はその辺の御説明が十分ではなかったのではないか、そういう反省のもとに、今回は谷大臣を先頭といたしまして、私ども政務次官、また局長、審議官、皆で手分けをいたしまして、世界じゅうを回りましていろいろなお話をさせていただいております。 ケアンズの中でも、例えばフィリピンでありますとかインドネシアでありますとか、ケアンズでオーストラリアやニュージーランドの言うこともわかるが、しかし、同じアジアの国として、米をつくる国として、日本の主張はよくわかると言ってくださる国がたくさんあるんですね。ケアンズの中でも、随分と利害が衝突している部分もございます。何もそれは仲間割れさせようとかそういう話ではありませんで、私どもの言っていることを理解してくださる国をたくさん持っていく。そしてまた、ケアンズでもないが、いわゆる発展途上国と言われる国に対して、まず農業をきちんとやって、国を近代化させていきましょうねと、日本がたどってきたようなプロセスをお話しすることによって、また、日本がなめましたいろいろな反省を御説明することによって、相互の理解、信頼関係を深めてまいりたいと思っておる次第でございます。 丸谷佳織 ありがとうございました。私は石破政務次官ほど責任の重い立場でないので言わせていただきますけれども、政務次官は仲間割れをさせようという気はないというお話がありましたが、もう仲間割れをさせるぐらいに強い態度で日本の多数派工作というか多数派づくりというのを、味方をどんどんつくっていっていただきたい、いろいろな手腕を振るっていただきたいというふうに御期待を申し上げます。 時間がなくなりましたので、最後の質問となるかと思うんですが、今までお話にありました、本当に国際交渉の場において、また、農業交渉という輸出輸入に関する各国の利益がもろに関係している分野において、交渉というのは非常に難しいものであるというふうな理解はしておりますけれども、我が国と同じような立場をとっていく国々との連携強化を図っていくことが、国際交渉を展開していく上で非常に重要でありますし、その努力を今後も続けていただきたいというふうに思います。 ただ一つ、EUについて若干の懸念を言わせていただくならば、輸出入国間における権利義務のバランスという観点から、輸出に関する規律強化を主張しています我が国とEUの間に溝が生じてくるのではないかというふうにも思うわけなんですね。ケアンズ・グループの方は、すべての農産品についてあらゆる形態の輸出補助金の撤廃というのを提案していますし、また、本年の六月の第二回の農業委員会におけるアメリカの提案でも、輸出信用についてはOECDで交渉するとしながらも輸出補助金は撤廃を打ち出している、こういった各国の状況の中、EUへの対応というのをどのようにされていくおつもりなのか、最後にお伺いします。 石破政務次官 お答えを申し上げます。 全く主張が一緒ということは恐らくあり得ないのだろうと思っております。一〇〇%一緒であればそれは結構なことですが、なかなかそうもまいりません。 ただ、委員の御指摘のような点は確かにあろうというふうに認識はいたしております。しかしながら、EUでも、例えば輸出信用のように輸出補助金と同様の効果を持つ措置については、規律の強化というものも主張しておるという点は事実としてございます。また、輸出補助金につきましても、削減のための交渉の用意はあるというふうな主張をしておるように私は認識をしておるところでございます。ですから、私どもの日本国と全く反対の主張をしておるわけではなくて、相当重なる部分がありますねと、どこが違うのかということを言い立てるのではなくて、どの部分であれば協調できるかという観点に立ちましたときに、EUとの連携はこれから先も重要であり、全力を尽くしてまいりたいと思う次第でございます。 丸谷佳織 以上で質問を終わりますが、これからWTOの交渉に当たって、本当に、言葉は、卑近な例で悪いんですけれども、けんかするところはぜひけんかをしていただいて、しっかりと日本の主張をしてきていただきたいというふうにお願いを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。 |