衆議院・外務委員会質疑録
1998年9月18日

丸谷佳織
 新党平和の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 北朝鮮の件もお伺いしたいのですが、まず、高村外務大臣になられて初めての質問ですので、大臣がことしの六月に、ちょうど政務次官でいらっしゃいましたときに、ニューヨークで開催されました国連の薬物特別総会に出席されましたので、その件に関連をして質問させていただきます。
 大臣も御存じのように、現在我が国でも第三次覚せい剤乱用期というふうに呼ばれまして、特に青少年、主婦を中心に薬物の乱用汚染が広がっています。先月の二十日に警察庁が発表したところによりますと、本年度の上半期の覚せい剤事犯摘発者のうち、中学生が上半期だけで二十六人という過去最悪の事態になっているわけです。
 もちろん、我が国のみならず、この薬物汚染というのは世界的な問題になっています。国連のアナン事務総長も、その発言の中で、薬物は私たちの社会を引き裂き、犯罪を増し、エイズ等の病気を蔓延させ、青少年と私たちの将来を殺している、こういった警告をされています。核兵器が人類を外側から破壊するものであれば、いわば薬物というのは人類を内側から破壊するものだというふうに言えると思いますし、世界規模の問題として、国際協力なしには解決できないものだというふうに認識をしております。
 高村外務大臣も、この総会の中で、日本政府を代表しまして、薬物乱用防止五カ年戦略をもとに具体的な方針を述べられているのですけれども、一九九一年から始まりました国連の麻薬乱用撲滅の十年の計画に沿って、我が国が具体的にどのような方針をとり、またどのような成果を上げているのかは言及されませんでしたので、まずその点をお伺いします。

高村国務大臣 
 国連麻薬乱用撲滅の十年は、国連における薬物対策強化の一環として、一九九〇年の国連麻薬特別総会において採択されたものであります。これまでの間に、一九八八年に採択されたいわゆる麻薬新条約への各国の加入や批准が促進される等、薬物の不正取引防止に対する国際的な枠組みが確立されつつあるところであります。また、国連麻薬乱用撲滅の十年とともに採択されました世界行動計画についても、各国においてその履行が推進されて、国際的な薬物防止対策が推進されているところであります。
 我が国としては、このような成果の一つとして薬物乱用防止五カ年戦略が策定されたわけでありますが、この戦略では、国際的な不正薬物の供給阻止のための国際協力を一層推進していこう、こういうことであります。
 もう少し具体的なことということであれば、ちょっと政府委員から答えさせたいと思いますが。

上田政府委員 
 お答えいたします。
 ただいま大臣から御答弁ございましたように、薬物乱用防止五カ年戦略におきましても、国際協力を一層推進していくということとされております。従来から、国連薬物統制計画、UNDCPを通じてマルチの協力を行ってきておりまして、今後とも、UNDCPへの支援を中心に推進してまいりたいというふうに考えております。
 なお、御指摘ございました、先般開かれました国連麻薬特別総会の我が方代表、すなわち高村現大臣の演説の中にもこの点言及してございまして、例えば東南アジア覚せい剤プロジェクトへの協力でありますとか、ミャンマーはプロジェクトへの拠出でありますとか、UNDCPとの協力について言及してございます。

丸谷佳織
 高村外務大臣の演説は私も読ませていただいたわけなんですけれども、今話にありましたとおりに、薬物乱用防止五カ年戦略に基づいて積極的に国際協力をされていく。その内容は、例えば覚せい剤対策に関する研究成果と取り締まり対策に関する情報の提供ですとか、薬物乱用防止教育用の資機材の途上国への提供などがあるわけなんですけれども、今、日本のUNDCPへの拠出金を見てみますと、実際には平成十年度では約三百八十万ドル、二年前の六百七十万ドルに比べますと約四五%減っているわけですね。
 日本の財政事情の悪化が背景にあることは私も承知しておりますけれども、このような拠出金額で日本が果たしてイニシアチブをとって国際協力をUNDCPを核として進めていくことができるのかどうか不安に思います。
 大臣は、この点いかがお考えでしょうか。また同時に、平成十一年度予算の中でどのように反映されていくおつもりか、お伺いします。

高村国務大臣
 委員と同じように私も不安に感じておりますので、財政当局に働きかけていきたい、こういうふうに思っております。

丸谷佳織
 実際に我が国の非常に厳しい経済状況の中で、ODAの方も削減せざるを得ないと考えますと、より効果的な国際貢献を戦略的に進めていく必要があるのではないかというふうに思われます。
 例えば、ミャンマー、タイ、ラオスは黄金の三角地帯と言われているのですけれども、この黄金の三角地帯を初めとしまして、アジアの各地域が薬物の供給地帯となっているわけです。ただ、薬物の原料を不法栽培しないと生計が立てられない、そういった経済状況もあるわけです。とりわけて、貧困によるストリートチルドレンが麻薬の売買にかかわるケースも非常に多いというふうに言われているわけなんですけれども、例えば、彼らの職業習得に結びつくような教育ですとか、また薬物教育の推進、そして薬物の不法栽培をしている農民に対するヘルスケアですとか、食糧供給、インフラ整備などの支援を積極的に進めていく必要があるのではないかというふうに思います。
 これが効果的な国際貢献につながっていくのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣
 全く同感でありまして、薬物対策の有効な手段の一つとして、麻薬に頼らないで済む生活の確保、これが重要なんだと思います。
このために我が国は、薬物対策の一環として、食糧増産援助等による代替作物の栽培への支援、草の根無償資金協力等による麻薬中毒者のリハビリや職業訓練への支援、初等教育への支援等を行っているわけでありますが、引き続きこうした支援を積極的に行っていきたいと思います。

丸谷佳織
 実際にアジアの子供たちが麻薬を売買しなければ生きていけないというような状況は本当に痛ましい状況で、今大臣がおっしゃいましたように、彼らの職業習得に結びつくような効果的な援助をまた推進していっていただきたいと思います。
 これは国内の話になりますけれども、薬物汚染というのは本当に日本でも深刻でありまして、最近調査したところによりますと、今の中学生というのが、以前は覚せい剤等を注射器で打っていたのですけれども、今は実際に、アルミホイルをお皿にしまして、その中に覚せい剤を入れるのですね。それで、火で熱して気化させる。ですから、注射器の跡が残らない。また、一人でやる必要はないわけですね。みんなで部屋に集まってそういった覚せい剤を気化したものをかぐというような、犯罪の悪化傾向にありまして、今例えば携帯電話が普及していますし、ポケベルも普及しているわけです。そういったネットワークを使って日本の子供たちも薬物汚染に染まっている、そういった現状があるということもぜひかんがみて、積極的に取り組んでいっていただきたいと思います。
 このような我が国の現状、第三次覚せい剤乱用期に突入してしまったという原因の一つに、末端の密売組織に在日の外国人が参入したことがあると一つ言えると思うのですが、これには捜査の国際協力の方が重要になってくると思います。
 ことし、テヘランで外務省がイランと領事当局間の協議を行った際に、覚せい剤対策担当者をイランへ派遣したいという警察庁の希望を伝えたところ、イランも理解を示したというふうに聞いていますが、その件について詳しく説明していただけますか。

上田政府委員
 国内におきます薬物の蔓延に日本に滞在している外国人がかかわっているという点が指摘されているところでございます。
 実は、今委員御指摘のイランとの関係でございますが、高村大臣が当時ニューヨークの麻薬特別総会に出席されました際に、イラン側とも協議されまして、その際に、その後行われる領事当局間の協議でも話させようというようなことを指摘していただきまして、その後、担当の者が協議を行いました。
 そのフォローアップとして警察当局、取り締まり当局が話し合いを進めるということまでを承知いたしておりますが、今後の具体的日程については、ちょっと今手元に資料がございませんが、フォローアップを続けていくということになっております。

丸谷佳織
 以上で麻薬に関しての質問は終わらせていただきたいと思うのですが、いずれにしましても、薬物を不法に栽培しない、そしてそれを使わないという大原則に基づいて、もうじき国連麻薬乱用撲滅の十年も終わりに近づくわけですから、日本としても、何としても効果を上げていくように努力していただきたいというふうに思います。
 続きまして、北朝鮮の問題に関して質問させていただきたいのです。
 八月三十一日に北朝鮮がミサイルを発射したことに関して、現在我が国でも、専守防衛をするために独自の情報を持つ必要があり、偵察衛星を持つべきだとの議論がなされているわけなんですが、私は、この問題は時間をかけてじっくりと慎重に議論をしていかなければいけないんじゃないかというふうに思っています。
 外務大臣は、日本が独自の情報を得るということと偵察衛星について、いかがお考えになっているのか、まずお伺いします。

高村国務大臣
 情報衛星は有力な情報収集手段の一つでありまして、情報収集機能強化が極めて重要である中、我が国の政府としても、これに関心を有してきているわけであります。
 外務省では、従来から情報衛星に関する調査を実施してきておりますが、先般の北朝鮮によるミサイル発射を踏まえて、今後いかなる方策をとることが可能か、内閣を中心に検討しているところであります。

丸谷佳織
 報道によりますと、北朝鮮の動向を注視していた米軍は、八月に入りまして、偵察衛星で、北朝鮮東部沿岸の大浦洞に発射台が準備される模様をとらえています。そして、ミサイル本体の燃料を注入している作業の模様もつかみ、八月十日には、弾道ミサイル観測用の電子偵察機を二機、三沢基地に派遣したというふうに言われています。また韓国も、八月の初めには同様の情報を持っていたとされ、日本政府は在日そして在韓の米軍から八月の中旬には、発射可能との情報を得て警戒を強めていたことを明らかにしています。
 ですから、いわば発射は寝耳に水ではなかったわけです。この情報を得てから北朝鮮に警告をしていたにもかかわらず、実際には三十一日に北朝鮮が発射をしましたが、実際に情報を得るという点では、発射態勢に入ったことなどをアメリカの方からほぼリアルタイムで伝えられていたわけですよね。その上で、独自の情報を持たなければいけない、独自の情報を持つ必要性イコール米側の情報への不安があるのではないかというふうに言うこともできると思うのですが、その点についてはいかがですか。

高村国務大臣
 日本はアメリカと同盟国でありますし、アメリカがきちっと情報を提供してくれることについては信頼をしております。信頼をしておりますが、それでもなおかつ、我が国独自の情報というのは、これから国際社会、いろいろな複雑になる中で必要なものだ、こういうふうに考えております。

丸谷佳織
 同盟国であるアメリカの情報を信頼されているとただいま外務大臣はおっしゃいましたけれども、それでは、例えば現在アメリカ但は、北朝鮮が発射したものが人工衛星の失敗であったというような情報を実際に流しているわけです。それに対して、日本は弾道ミサイルではないかというような見解があると思うのですが、その判断はどのようになりますか。

高村国務大臣
 私が答えるべきことなのかどうかよくわかりませんけれども、先日、参議院の外交・防衛委員会でたまたま防衛庁長官が答弁しておりました。その言葉をおかりすれば、防衛庁とすれば、米側の情報、そして独自の情報、そういったものを総合して、衛星という確率は低いと思うけれども、アメリカ側がそういうことを言っている以上、詳細な情報を知った上でさらに判断していきたい、こういう趣旨のことを、若干違うかもしれませんが、そういう趣旨のことを言っていた、私なりの記憶ではそういうことでございます。

丸谷佳織
 実際に情報を得て何をするのかというところが問題だと思いますし、そこが決まらないと、偵察衛星を持つ持たないという議論は始まらないのじゃないかというふうに私は思っております。
 例えば、今のようにアメリカ側の情報とそして日本が独自で得た情報が違った場合、どのように判断をして対処をしていくのか、どういうふうに分析をしていくのか。あるいは、情報万能主義ではないわけですから、独自の情報があれば一安心ということにはなりませんし、独自に入手した情報を防衛のためにどう使っていくかということを考えますと、今度は、日本独自で反撃システムを持つのかあるいは持たないのか、それとも、日米安保に基づいてアメリカに反撃をするように強く訴えていくのかどうか、そこまで覚悟を決めて議論をしなければ、偵察衛星を持つ持たないという議論は始まらないのじゃないかというふうに私は思うのですが、外務大臣はどのようにお考えですか。

高村国務大臣 当然、今委員が言ったようなことも含めて、幅広い観点から検討していくことになると考えております。

丸谷佳織
 また、先ほど藤田議員が御質問されていらっしゃいましたけれども、八月の中旬に日本側からあるチャンネルを通じましてミサイルの発射を思いとどまるようにと警告した際に、例えば、本当に人工衛星であれば不必要な誤解を招く必要はないわけですから、ミサイルではないのだ、人工衛星を打ち上げるだけだという説明をしているのが普通なんですけれども、それをあえてせずに三十一日に発射をして、日本にこのような不安を与えてしまった、不信を与えてしまったという事実をどのように分析していくのかというところが非常に日本にとっては必要なのじゃないだろうか。先ほど大臣の御答弁の中では、見通すのは非常に難しいという趣旨の御答弁だったというふうに思うのですけれども、今非常に経済的にも追い詰められている北朝鮮の外交というのは、融和ではなくて戦って勝つことが外交の姿勢になっているのじゃないかというふうにも思うのですね。
 そういった北朝鮮という国が、たとえどんな国であろうとも、日本のすぐ近くにあるという事実は曲げられないわけで、その北朝鮮と北東アジアという枠組みの中でつき合っていく以上、戦いを外交戦術としている北朝鮮を上回る戦略的な外交をしていかなければいけない日本が、北朝鮮のこれまでの動きを分析する必要性は非常に高いというふうに思います。今の時点で分析が難しいのであれば、今後引き続きその分析をされていくおつもりかどうか、お伺いします。

高村国務大臣
 私が申し上げたのは、具体的意図を断定することはできない、相手が考えることだからと。ただし、北朝鮮がミサイルを発射したことによって、その結果、国際社会が対応を誤れば、北朝鮮がこういう点で利益を得てしまう可能性があるとか、ああいう点で利益を得てしまう可能性がある、そういう分析はできるわけでありますから、そういうことは当面の戦術的なこととしてすべて阻止していくように動かなければいけない。
 それからもう一つ、委員が御指摘のように、幾ら変わった国であってもそばにいることは間違いないわけでありますから、中長期的には、第二次大戦後の不正常な関係を正す、そしてそれが朝鮮半島の平和と安定に資する、そういった状況になるように、日本とすれば粘り強く対応していく、それは当然のことだと思っております。

丸谷佳織
 時間がありませんので、最後の質問になってしまうわけなんですけれども、対北朝鮮に関して、外交戦術の一つで、KEDOの問題をどうしていくのかというのが今後大きな問題になってくると思うわけなんです。私は、このKEDOが北朝鮮の核開発を中止させるという大義の上に立っている以上、KEDOへの拠出金は日本は分担するべきだ、早く凍結を解除するべきではないかと思っているわけなんです。ただし、かといって、外交はギブ・アンド・テークなわけですから、北朝鮮から何か日本が得るものがなければいけないわけで、それには北東アジアの安心を得なければいけない。
 以前にも委員会で北東アジアの非核構想ということは言わせていただいているのですが、毎回、現実的ではないというお答えはいただいているのですけれども、例えば、北朝鮮と韓国は実際にNPTで核兵器非保有国として加盟済みでありますし、九一年十二月には朝鮮半島非核化共同宣言をしているわけです。もちろん日本は核を所有していないわけですから、例えば、この状態で北東アジアの平和を考えて非核構想を構築していくのであれば、実際に北朝鮮と韓国の核の相互査察を、今なされていないわけですから、これをするようにという条件をつけてKEDOに拠出金を提出するという考え方が一つできると思うのですけれども、この提案についてはいかがでしょうか。

高村国務大臣
 そういう条件をつけてKEDOの署名をするということ、そういう条件ができればいいかもしれませんけれども、そういう条件ができるまで待つということは、KEDOの署名が何年も先になるということになりかねないという面もあるということは御理解いただきたい。
 委員が御指摘になったように、KEDOの話は、単に北朝鮮を支援するというだけの話ではなくて、日本の安全保障そのものの話でもあるわけでありますから、当面進行を見合わせるといっても、そのほかの当面ということと、その当面の意味が若干違ってくるということはあり得ることだと思っています。

丸谷佳織
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。