衆議院・外務委員会質疑録
2002年7月17日

吉田委員長 
次に、丸谷佳織君。

丸谷佳織
 公明党の丸谷佳織でございます。よろしくお願いいたします。
 まず最初に、アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及び同連合一般規則の追加議定書の改正について質問をさせていただきまして、その後、国際情勢についてお伺いをさせていただこうと思います。
 まず、この両議定書の改正の問題なんですが、今回の憲章及び一般規則の改正では、連合の組織であります中央事務局及びアジア=太平洋郵便研修センターを廃止し、新たに事務局を設けること、また、この事務局は管理部門及び研修部門で構成することになっておりますが、なぜこのような組織変更を行う必要性があるのかという点と、また、今回の改正によって、マニラとバンコクに分散していた組織が今度はバンコクに統一され、組織的にスマートになるというふうに言えると思うんですが、この合理化効果というのはいかなるものか、この点についてお伺いします。

高橋政府参考人 
 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおり、今回の改正の目的は、従来、中央事務局というのがマニラにございまして、他方、バンコックにアジア=太平洋郵便研修センターというものがございまして、小さな組織なのに二つに分かれておりまして、これをそれぞれまず廃止いたしまして、新たにバンコックに管理部門それから研修部門から成る統合的な事務局というものをつくる、そういう形で組織を単純化し、事務の合理化を図るということが目的でございます。
 ただいま申し上げましたように、マニラにございました中央事務局と、それからバンコックにございました研修センターというものを廃止いたします。この組織改正によりまして、このアジア郵便連合は大変小さな国際組織でございまして、職員総数二十二名でございますけれども、このうち三名を削減することができることになります。十九名の組織になるということでございます。さらに、一つになることによりまして、人員政策上、より適切な人員配置というものが可能になるのではないかということを期待いたしております。
 それから、予算面に関しましては、当面、従来マニラにありました部分のある部分はバンコックに移転をさせなければいけないということで、引っ越し費用がかかります。それから、バンコックにおきましては、既存の施設というものを少し補修する必要がございますので、そういう臨時の予算というものを計上してございますので、当面、若干ふえるということになりますが、これを差し引いた通常の予算ということで考えれば、大きな節約というものが期待できるのではないかというふうに考えております。
 以上です。

丸谷佳織
 ということは、中長期的に考えまして、組織のスリム化、また、より一層の予算の削減というか、小さな組織を大きく機能させていこうという目的のために今回の組織改正もあるのだというふうにお伺いをしました。
 もう一点、我が国でも現在議論になっていますが、先進国におきましては郵便事業の自由化ということが今問題になっています。今までの流れですと、郵便事業というものは歴史的に国の独占事業であったところが多いと思うんですが、この郵便事業の自由化ということは、これを管理監督します郵政監督庁の利害というものとは必ずしも一致しないというふうに思います。
 そこで、今回、アジア=太平洋郵便連合あるいは万国郵便連合が、今後郵便事業の自由化が進んでいく中で、郵政監督官庁が構成するこの連合組織をどのように機能させていくのか、先進国において郵便の自由化が進む中で、この二つの連合はどのような貢献を国際社会になし得るのか、この点についてお伺いをします。

高橋政府参考人
 委員御指摘のように、先進国の中におきまして郵便事業の自由化という動きが現在見られているわけでございます。
 UPUそれからこのアジア郵便連合におきましては、これを構成しております郵政庁というものがございますけれども、この郵政庁の中身につきましては各国それぞれ国内法令で定義するということになっております。実態的には、郵便業務の監督を行う組織の規制体と、それから実際の業務、経営を行います組織ということに分かれるわけでございます。
 それで、郵便事業の自由化というものが進んでいきますと、経営を行う、事業を行う組織というものの中に、公社だとか、それからさらには全くの民間の事業体というものも入ってくる可能性があるわけでございまして、UPU及びアジア郵便連合におきましても、この枠組みにおきましても、加盟国がそういうふうにした方がいいというふうに判断をいたしますれば、民間事業者もこの郵政庁の概念に含めて、UPUあるいはアジア=太平洋郵便連合の活動に参加できる、そういう体制がとられるというふうになっております。
 しかしながら、現時点におきましてはまだそこまで、例えばアジア郵便連合におきましても、ニュージーランドにおきましてはかなり自由化が進んでおりますけれども、そういう形には今のところはなっておりません。
 いずれにいたしましても、こういう動きというものがございますけれども、万国郵便連合にいたしましても、世界のいろいろな文化、社会、経済的な背景の違う、そういう国家間の郵便関係というものを最も効果的に運営していく、それから、加盟国の領域のすべての地点において恒久的かつ合理的な価格のもとで受けることができるような普遍的な郵便業務を増進する、そういう万国郵便連合の役割というものが規定されているわけでございますけれども、この役割というのは依然として変わらない重要なものがあるだろうというふうに考えております。
 それから、アジア=太平洋郵便連合におきましても、郵便業務の円滑化ということを目的に、郵便職員の研修等の事業をやっているわけでございますけれども、多様な通信手段というものの恩恵を十分に享受できない、そういう途上国が多い地域でございますし、不便な地域に住む郵便利用者というものもたくさんいらっしゃるわけでございますので、こういったことを考慮に入れますと、APPU、アジア郵便連合の役割というのは今後とも重要であると考えられます。
 ただし、先ほど申しましたように、今後自由化の動きというのがどんどん進んでいきますれば、枠組みとしては、構成する郵政庁の概念に民間の事業者が入ってくるということもありますので、そうなればそれでまたいろいろな新しい動きが出てくるかと思いますが、それぞれの組織が目的としている役割だとか意義というものは皆理解しながらそれを運営していくということになるだろうと思います。

丸谷佳織
 その目的、また役割に関しては非常に賛同するところでありますけれども、現実問題として、両議定書の署名国というのは我が国を含めて二十二カ国、そして締結をしているのがベトナム一カ国ということになるわけです。ですから、その大きな目的、また役割を完結させる意味においても、この議定書への加盟というのは推進していかなければいけない立場にはあると思うんですけれども、この議定書に関しての質問の最後は、連合加盟国の締結に向けた現状と今後をお伺いします。

高橋政府参考人
 この議定書は既に七月の一日に発効いたしておりますけれども、六月末現在におきまして両追加議定書の締約国というのは、委員が御指摘のとおり、ベトナム一国だけでございます。
 この両追加議定書につきまして、これからほかの署名国がどういうような形で締結していくかというような見通しにつきましては、現在のところ、私ども詳細な見通しは持っておりませんけれども、しかしながら、今回の組織改革というものが持っております有用性、意義につきましては加盟国の間では広く、よく理解されているものでございますので、連合加盟国におきましては、早期に締結する、いずれの国におきましてもそういうことが理解されているものというふうに考えております。

丸谷佳織
 ありがとうございました。
 我が国におきましても、構造改革そして行政改革というのが非常に大きなテーマになって、今これに取り組んでいるわけですけれども、国際機関におきましても、目的に応じた改革というのは柔軟な姿勢で行っていかなければいけない、また、今後この連合組織についても、必要なのであればその姿を変えていくようなことも必要ではないかというふうに感じているという感想を述べさせていただきたいと思います。
 また、もう一点。改革という面では、外務省においても改革は昨年から引き続き大きなキーワードになっていると思います。この二年間、では本当にどのように外務省を変えればいいのか、また外務省はどのように変わっていくべきなのかというのは議論し尽くされたと思いますし、今の段階では、もうその改革案を実行に移すときが来ているというふうに思います。
 しかしながら、先週の、七月の十二日金曜日の朝刊を見ましても、駐ロシア日本大使館の公邸建設の記事が載っておりまして、あのような記事を見ますと、外務省が今改革をしていくという流れの中で、それに逆らうような報道内容に受けとめられまして、正直言って非常に残念な気持ちがしております。本当に外務省は心底変えようと思っているのかな、変わろうとしているのかというところが、応援団の一員ではありますけれども、不安に思う点ですので、この在外公館について質問させていただきたいと思うんです。
 駐ロシア日本大使館が非常に華美ではないか、また巨額のお金をかけ過ぎるのではないかという点が新聞紙上では指摘をされるわけですが、一般的に言って、在外公館を建設する基準というものは外務省の中にあるのでしょうか。この点についてまずお伺いします。

北島政府参考人
 お答え申し上げます。
 かつて、外務省の中で有識者の意見を聞くという場をつくりまして、そうした有識者の意見も伺いながら整備基準を設けたということがございます。その整備基準に則した形で、館員数に応じて床面積等を算出して設計をするということでございますけれども、同時に、場所によっての特殊性等がございますから、例えばモスクワの場合ですと相応のセキュリティー対策を講じる必要があるといったことがあるわけですけれども、そうした個別事情も踏まえて建設するという考え方でございます。

丸谷佳織
 地域の特殊性を踏まえて、また館員の数によって、床面積ですとかを計算するというのが基準というお答えだったと思いますが、そうしますと、今マスコミ等で指摘をされていますプールあるいはサウナといった態様、これはどのような必要性から建設をされるのですか。

北島政府参考人
 モスクワの日本大使館の場合ですと、特殊な事情ということで御理解をいただければと思いますけれども、セキュリティー対策のために、建物の構造強化、それから資機材の検査、建設現場の警備対策等、こういったことが必要で、こうしたセキュリティー対策のために通常以上に費用を要するというようなこととか、それから、当方の要求性能を満たす資機材、鉄骨を初めとする資機材、電気や機械などの設備機器等のかなりの部分を日本を初め第三国から調達せざるを得ないということで、よその国において我が国大使館事務所を建設する場合と比較して、全体として相対的に高額とならざるを得ない事情が存在するといったことがございます。

丸谷佳織
 私が今申し上げたのは、高額過ぎませんかという質問ではなく、在外公館としてプールあるいはサウナ等の設備を備えることに関して、これはなぜ必要なんですかという質問をしました。もう一度お答えください。

北島政府参考人
 申しわけございません。
 プールとサウナについての御指摘でございますけれども、まずプールでございますけれども、モスクワにおいては、寒さが厳しい、それから屋外における活動が制限される期間が長く続くということで、このような生活環境が厳しい地域においては、館員の心身の健康維持を図る一環として、プール等の厚生施設の設置を考慮しているということでございます。
 ちなみに、近年モスクワにおいて建設されたアメリカ、ドイツ、イギリスといった主要国の大使館においても、プール等の厚生施設が設置されているということでございます。
 さらに、在外公館のプールの場合、厚生施設としてのみならず、非常時の防火用水、生活用水の確保に対応できるよう、危機管理機能の面からも必要性があるというふうに考えています。
 さらに、新事務所に設置予定のプールにつきましては、在留邦人の方々にも利用していただくことを考えております。
 それから、サウナでございますが、これは、経費の削減に努めたいということで今いろいろな見直しをやっております。その中で、サウナについては見直しの対象として考えたいというふうに思っております。

丸谷佳織
 この経済状況のもと、やはり見直すべきところは見直していただかなければいけないのは当然なんですけれども、実際に、私も北海道出身でございまして、北の暮らしの厳しさというのはわかっているつもりでございます。
 今のプールの御説明に関してでも、実際に、じゃ自分の学校はどうだったかなと考えますと、やはり外にプールはなかなかつくれないので、学生の健康維持のためには室内温水プールというものを有していたというふうに思って、理解できる部分もあるんですが、生活用水あるいは避難ということもおっしゃられましたよね。これを聞くと、本当なのかなという、ちょっと疑問も実は残ります。
 実際に今までこの公館のプールが生活用水に役立った経験があるのかどうか、この点をお伺いします。

北島政府参考人
 一九九〇年に湾岸危機が発生した際に、クウェートの大使館、日本大使公邸の地下にプールがございまして、在留邦人の皆様のために、この公邸の地下のプールの水を生活用水として活用した例がございます。

丸谷佳織
 国民の目も、外務省の改革、具体的にどのように行っているのか、非常に期待とともにまた厳しい監視の目もあるということを十分に御理解していただいた上で、必要十分、不可欠な改革を外務省に再度お願いしたいというふうに思います。また、これをお願いとしまして、次の質問に入らせていただきます。
 次に、ICCについてお伺いをします。
 七月一日に発効しましたICC条約なんですが、この大きな目的としまして、国際社会に人道主義と法治主義を広めていく、そして非人道的な大量虐殺、戦争犯罪を抑止する力というものを国際社会に与えることが挙げられると思いますが、その意味から、日本もこの条約の発効に関して大きな役割を果たしてきたというふうに認識をしています。
 しかし、この条約に一度署名をしました後撤回をしましたアメリカは、この条約のもとでは米国要員が訴追されるおそれがあるとしまして、ボスニア・ヘルツェゴビナでのPKOの期間の延長に拒否権を行使しました。条約の目的とその意義から考えて特例は認められないと主張する国もあったとお伺いしていますが、結局、国連の安保理でPKO要員に対するICCの訴追を猶予する決議案を採択し、とりあえず年内、十二月三十一日まではアメリカのPKO参加は延長されることになりました。
 ブッシュ政権に移行しましてからのアメリカ政権は、今回の一連の問題もそうなんですが、一国主義に偏り過ぎてはいないか、その部分が目立ち過ぎていませんかという批判があっても私は仕方がないと思いますし、また、一国の圧力で公平な裁きの場であるべき司法の独立性に傷をつけたのではないか。また、ICCのみならず、今後も国連を中心としました多国間の協調体制というものが脅かされるような危惧を私は感じるわけなんですが、外務大臣は今回の一連の事態をどのように認識していらっしゃいますか。この点をお伺いします。

川口国務大臣
 ICCにつきましては、米国の主張に関連して、安保理におきまして、PKOの要員に対するICC管轄権をめぐる問題に関しまして現実的な解決が図られたと私は歓迎をいたしております。
 これは、国連のPKOあるいは多国籍軍といった安保理で承認をされた活動というのは、国際の平和と安全に関連して大きな役割を果たしてきているわけでございますけれども、ここにおいて米国の役割というのは非常に大きく、この役割は高く評価をしているわけでございます。そして、米国が引き続きこれらの地域で、例えばボスニア・ヘルツェゴビナといった地域でプレゼンスを維持するということが重要であるということで、その意味で現実的な解決であったということでございます。
 米国は、委員が御案内のように、このICCとの関連でいいますと、規程には署名をいたしましたけれども、ことしの五月に入って、ICC規程の当事国となる意図は持っていないということを言っているわけでして、これについては幾つかの理由を挙げているわけでございます。
 こうした米国の立場を考えまして、委員のおっしゃっているICCの精神がゆがめられることになるのではないかということについての御懸念については理解しますけれども、こういった米国の態度と国際の平和と安全に米国が果たす役割の重要性ということを考えますと、今回の解決というのは現実的なものだったと私は思っています。

丸谷佳織
 大臣の御答弁では、現実的な対応であったと。私は、ぎりぎりの妥協案であったのかなというふうに思うんですけれども、実際に、ICCを批准している国は現在七十六カ国あるわけですけれども、この中で、安保理に入っているアメリカ、ロシア、中国は署名もしておりませんし、日本も署名をしておりません。また、インドも署名をしていない。その理由として、ICCの実効性あるいは効力に疑問を持たざるを得ないという意見もあるわけなんです。
 しかし一方で、たとえアメリカが主張しているような危惧があるにせよ、PKOであっても、非人道的な行為が行われた場合には、当然これは裁かれなければいけませんし、もともと、PKOであっても非人道的な行為というものが許されていいことではございません。
 また、条約の補完性の原則によりまして、自国で適正な捜査と処罰が行われる場合にはもともとICCは管轄をしないという原則があるわけですから、国際社会全体に人道主義と法治主義を根づかせようとする大きな目的のために各国がより積極的な行動をとることによって、その効力、実効性に疑問を持たざるを得ないと言われているICCを強化し、意味を持たせることにつながると私は思います。
 そういった意味で、日本も署名をしていない状況ですけれども、各種国内の法整備の問題は存じておりますが、国内法の整備というのを関係省庁に迅速に指示していくべきというふうに思いますが、今後の対応をどうされるつもりなのか、この点についてお伺いします。

川口国務大臣
 我が国といたしまして、国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止して、国際の平和と安全を維持するという観点から、ICCの規程につきましてはずうっと一貫して支持をし、実現に向けての努力をしてきたわけです。
 この規程の締結につきまして、現在、内容、各国における法整備の状況を精査するとともに、国内法令との整合性について検討をしています。それで、七月にICC規程が発効したということを踏まえまして、政府としても検討を進めていきたいと考えています。

丸谷佳織
 実際に、有事法制のみならず、新規立法が必要になってくる部分もあるというふうに思いますので、この点につきましてもしっかり取り組んでいかなければいけないというふうに思っていますし、また、積極的な日本の姿勢を示すということが一つの国際社会に対するメッセージにもつながるというふうに思っておりますので、ぜひ積極的かつ素早い対応をお願いしていきたいと思います。
 続きまして、サミットについて幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。
 今回のサミットは、サミット自体が形骸化してきているのではないかという指摘を踏まえてか、いろいろな面で改革、新しい試みがなされ、私も評価するところでございますが、その中で、ロシアがG8に正式に参加することが決定をし、また経済討議にも参加していくことが決まり、二〇〇六年のサミットはロシアで行うことが決まるなど、領土問題を抱える我が国にとっても非常に大きな意義があるサミットであったというふうに思います。また、国際テロですとか、あるいは大量破壊兵器の拡散問題に対応していく上でも大きな意義を持つというふうに思います。
 ただ、このサミットが、石油危機後の世界経済の安定化を図るために始まったものでございますが、実際には経済討議の場から政治討議の場へと変わりつつある中、ロシアを含めて経済討議をしていく、このロシア全面参加の意義について政府はどのように考えていらっしゃるのか、この点についてお伺いしたいと思います。日本は経済外交を今まで中心としてきたということもありまして、このロシア、経済的にはオランダと大体同じぐらいかというふうに思いますけれども、ロシアが経済討議にも正式にかかわっていくというこの意義についてお伺いをします。

川口国務大臣
 サミットが七五年に始まって以来の流れというのは、今委員がおっしゃったように、経済から始まって政治に移ったということでして、最近はそれにグローバルなさまざまな問題が対象として加わってきている。例えば貧困の問題ですとか環境の問題ですとか、そういったことが入ってきているわけでございます。そうしたさまざまな、その時々の国際社会の課題をサミットで取り上げて、具体的にどういう方向で解決をしたらいいかということについての方向性をサミットで出してきたということです。
 我が国として、今度サミットにロシアが参加をするということになったことは、歴史的な意味で非常に大きな決定であると考えております。こうした決定に基づいてロシアはこれ以降参加をしていくわけですけれども、国際社会で、G8の一員として、重要でかつ意味のある役割を果たしていくということを期待したいと考えています。

丸谷佳織
 今回のサミットは、九・一一、昨年の九月十一日以降初めて主要国の首脳が一堂に会する場というふうになりました。その意味からも、対テロに関する施策、あるいは、ロシアが保有する核兵器など大量破壊兵器ですとか核関連物質がテロ組織に流出するのを防止するための新たな支援の枠組みとしてG8グローバルパートナーシップというものが合意されたわけです。これは、G7として十年間で約二百億ドル、そして、日本の小泉首相も二億ドル拠出することを言明されていますが、ロシアの核不拡散ということに関しては、我が国は九三年に核兵器廃棄協力委員会というものを設置しまして、非核化支援として二百億円を既に拠出しているわけですね。ただし、これは、ロシア側の協力体制が不備であるという残念な結果から約百五十八億円が未執行になっていると認識をしています。
 こういった背景も踏まえて、このG8グローバルパートナーシップの二億ドル、核兵器廃棄協力委員会との関係をどのようにしていくのか。対テロに対して、あるいは核不拡散という大きな問題に対して、お金を出さないというのも悪いんですけれども、出したお金を有効に使えないというのも、これはよくないというふうに思うんですね。ですから、すっきりとした形を見せてほしいというふうに思うんですが、この協力委員会との関係、どのように調整していかれるのか、この点についてお伺いします。

川口国務大臣
 おっしゃったような、カナナスキス・サミットで合意された、大量破壊兵器及び核物質の拡散に対するG8グローバルパートナーシップということにつきましては、おっしゃったテロ対策という観点からも、安全保障という観点、それから環境という観点からも大きな意義を持っていると私は考えています。
 我が国は、このうち当面二億ドル余りを貢献するということになっていまして、これは、委員が先ほど御指摘になったような、ロシアでこういった事業を実施していく上でさまざまな困難があるということを踏まえて、指針をまず合意をいたしまして、それを受けて、今後の事業の実施上の諸困難が解決されるということを前提として決定をされたということでございます。
 そして、その二億ドルのうち、一億ドルがG8が新たに設立をする国際機関に拠出をするということになりました。そして、この機関への拠出分以外の一億ドル余りにつきましては、G8の新たな枠組みであるこのパートナーシップのもとで、関係国の実施上の困難を除去する努力等を見きわめながら、非核化協力委員会の抜本的な見直し作業を行う中で具体的な使途を検討していきたいと考えております。

丸谷佳織
 九三年に設立しました核兵器廃棄協力委員会、目的はすばらしいものでしたけれども、実際にはいろいろな問題で未執行のお金が残っているということも踏まえて、どのようにしたらロシア側の協力を確保して十分な支援ができるのかということを、ぜひ今までの経験を生かしていただきたいというふうに思いますし、有効に二億ドルというのは使われるべきだというふうに思います。
 では、経済局長にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
 サミットは、経済討議の場から政治討議の場、また、大臣がおっしゃいましたけれども、グローバルな、環境の問題あるいは貧困の問題の討議の場に変わってきている面もあるという一面、やはり経済というのは非常に大きな問題であると認識をしています。
 今回のサミットに関しまして、新聞の論調を見ますと、「世界経済深入り避ける」とか「日米株安、ドル安…避けて通るしかない?」あるいは「G7、楽観論あえて強調」、こういった見出しが躍っていたわけなんですけれども、市場の期待にこたえていなかったのではないか、こういった論調が目立ちました。
 これを逆に言えば、サミットは世界経済の安定化に向けて主要国が政策協調を進めていくことが期待されるというふうに言えるとも思うんですが、今回のサミットでの経済討議自体が二時間足らずのものであった。世界経済の不安解消のための政策協調自体は、議長サマリーには上がっていなかった。逆に、懸念材料となるものを書き込むというよりも、世界経済の成長の見通しに自信を示すものであったというふうに私は議長サマリーを読みました。
 しかし、サミット直後の世界経済の現状を見ましても、議長サマリーとは全く違う方向へ行っている。このサマリーに見られた世界経済安定への自信と現在の経済の状況、なぜこんなにも乖離しているのか、総括を含めてお話をお伺いします。

佐々江政府参考人
 お答え申し上げます。
 このサミットの結果について、我が国の新聞等も含めまして、先生が今おっしゃられましたように、サミットが果たして現在の問題に適切に対処しているのかという問題提起もあったことは十分私どもも承知しているわけでございます。
 他方、今回のサミットでは、第一日目の午後のG8の会合で、世界経済のところで、これは開発問題も含めて、あわせて議論をしたということでありまして、今回、サミット全体が通常のサミットに比べて日程も短かったということもございますけれども、その中でも、世界経済自身についてそれなりの時間が割かれて、議論が行われたというふうに思っております。
 その結果につきましては、今先生がおっしゃられましたように、基本的には、今の世界の経済の基本的条件は健全である。これはもう、その前にG7の蔵相会議でもそういう基本的な認識で、この延長上で議論が行われたということであります。ただし、その機会に、同時に、すべて楽観論で終始したということではなくて、最近の市場の動向等に注意していくべきであるという議論も出ましたし、この過程で、先ほど先生が御指摘のありましたような、企業の不正会計等の問題についても言及は行われたということでございます。
 もちろんその過程で、世界的な株安あるいはドル安についての不透明感が増しているということで、リスク要因があるという議論はあったわけでございます。特に、それは地域情勢とか、あるいは当面、短期の問題もありますねという議論もあったと思いますけれども、しかしながら政策的な認識として、やはり中長期に見て、今はそういう問題はあるけれども、中長期の問題としては健全な方向に向かっている。去年に比べて今はいいし、今に比べて来年はよくなる、そういう見通しである。だから、基本的ないろいろな指標はいい方向に向いているということは事実としてありますし、またそれが共通の認識であったというふうに思うわけです。
 この関係で、構造改革を成功させるためにリーダーシップが必要ですという議論もあったわけでございますけれども、当面の短期の市場の問題について、G8自身として、例えば協調的な行動をとるというようなことについて議論されなかったのは、まさに先生のおっしゃるとおりでございます。ただし、首脳の認識としては、そこの面に焦点を当てるよりは、むしろいい方向に行っているということに基本的に自信を持つべきだという方向に結論をしたということでございます。

丸谷佳織
 実際に、このサミットをどのように改革し、うまく機能させていくかという大きな問題にもつながってくるというふうには思うんです。グローバルの問題、環境の問題、貧困の問題を話し合うのはいいことだというふうに思うんですが、この貧困を克服するにも、やはりG7を初めとして日本の経済も安定していかなければ貢献できない部分も多いわけでございます。
 そういった意味で、経済討議というものが、お互いの顔色を見ながら書けるところだけ書いておこうみたいな、そういった楽観主義的な部分というものを、また一面仕方ない部分もあるかというふうには思うんですけれども、こういったことを乗り越えながら、本当に貧困や環境問題を克服するために貢献できるような、世界経済安定に向けたしっかりとした経済面での主要国の合意ができるようにと、次のサミットに期待をさせていただきたいというふうに思います。
 時間がなくなりましたので、最後に、もう一つサミット関連のテーマとして大きなものの一つがアフリカ問題だったと思うんです。このアフリカ、毎回サミットでテーマになりますが、重債務貧困国の対応について、最後にお伺いをさせていただきます。
 日本におきましては、債務削減を行いますと、新たな借款の供与は困難になって、無償資金協力というのが原則になるわけなんですけれども、九二年のリオ・サミットから、先進国は途上国に対するODAをGNPの比率〇・三三%から〇・七%に上げようと目標を立てたのにもかかわらず、二〇〇一年には、実際にはGNPの比率にしてODAが〇・二二%に減少していますし、逆に途上国の債務というのが三四%にふえています。
 この債務の問題、非常に深刻な問題である以上、重債務貧困国を救済していくためには柔軟かつ多岐にわたる手段が必要かと思います。その意味から、日本の原則の変更の見直しも必要になってくるのではないかという質問が一点と、これはアフリカではないんですけれども、ヨルダンに対しますODAの債務について、あわせて二点お伺いしたいと思うんです。
 六月二十五日の日米首脳会談でブッシュ大統領は、ヨルダン国王の訪日に際しまして、対ヨルダンの有償のODA千七百五億円に対し、これを帳消しにというようなリクエストもあったようでございます。この扱いについてどのようにされるのか。帳消しにした場合、ヨルダンに対して借款を供与することは現在は不可能になってくるわけで、どのように支援を続けていかれるのか。
 この点、二点お伺いします。

川口国務大臣
 二つ御質問がありまして、一つがアフリカ支援ですが、まず一般的に申し上げまして、債務救済イニシアチブが適用される重債務貧困国に対して、我が国としては、ODA債権及び適格な非ODA債権を一〇〇%削減をするということにしておりまして、これらの国々に対して、我が国としては債務救済イニシアチブを迅速かつ効果的に実施をしていく、そして貧困削減、社会開発につなげていくということが重要な課題の一つだと考えております。
 これらの債務削減を行った国々に対しては、我々としては、新規の借款を供与しないで、無償をやっていくということで考えております。開発課題に対しては、無償資金協力及び技術協力を中心にして対応していくことを考えていくというのが我が国の立場でございます。
 それから、ヨルダンですけれども、七月一日にアブドラ国王が小泉総理と債務繰り延べについてお話をなさいました。先方から、有利な条件で債務繰り延べをしてほしいという要請があったわけです。その後、七月八日から十日までパリ・クラブの会合がありまして、そこでヨルダンの債務繰り延べが要請をされた。それに対して、我が国としては、ヨルダンの経済改革の努力を支援するために、この議論に積極的に参加をいたしまして、一定の債務について、ヨルダンと主要債権国との間で最大で二十年間繰り延べをするということについて合意をいたしました。今後、二国間の合意をやっていくということでございます。

丸谷佳織
 以上で終わります。ありがとうございました。