衆議院・外務委員会質疑録
2002年5月17日

吉田委員長
 次に、丸谷佳織君。

丸谷佳織
 丸谷佳織でございます。
 時間が短いので、前置きは抜きにしまして、早速質問に入らせていただきます。
 八日に在瀋陽の総領事館で起きました事件についてお伺いをしたいと思うわけなんですけれども、総じまして、総領事館の全体的に及ぶ不備な点が非常に大きな外交問題に至ったというような反省を指摘せざるを得ないというふうに考えております。そのさまざまな不備な点についてきょうはお伺いをしたいというふうに思うんです。
 まず、私がニュースを見て最初に思ったのが、なぜあの亡命のシーンがカメラに撮られているのだろうかと、非常に不思議に思いました。その後の報道によりまして、亡命を支援している団体がカメラでその現場を撮影していたということがわかったわけなんですけれども、彼らのその日の行動の情報というのが流れていた。また、日本総領事館の正面のほぼ上にカメラを構えているような状況からしますと、彼らの行動は、徹底して秘密裏に行ったとは言いがたい。ある程度の国際社会の協力を得るためにインフォメーションを与えながら、何とか亡命を図りたかったというような状況ではなかったのかというふうに想像できるわけなんです。
 この総領事館は、このような亡命希望者が多発している中で、この亡命についての情報を入手していたのかどうか。もし情報を入手していたのだとすれば、総領事館自体の体制が非常に不備であったというふうに指摘ができますし、また、入手していなかったとしましたら、外交機密費という、日ごろ、そこの当地の入手しがたい情報を集めるために使われているお金が、その目的に到達していないという指摘もできるというふうに思うんですけれども、この情報の入手いかんについてお伺いします。

田中政府参考人
 私どもも、一般的にはこの北朝鮮の関係のNGOとの間の連絡というのはなくはございません、意見交換を行ってきていますけれども、今回の事案について具体的に、この特定のNGOから事前の情報を得ていたということはございませんでした。

丸谷佳織
 ほかの公館は、公館に対しまして亡命希望者がふえているという状況を踏まえて体制を強化していたわけです。その点も総領事館の反省点として日本側は持たなければいけないというふうに指摘をしたいと思います。
 では、次に、事件が発生しましてからの連絡体制の不備につきましては、本日午前中の質疑の中でも多くの議員が触れていらっしゃいまして、その答弁を聞いている中では、やはり去年のえひめ丸のときもそうだったんですけれども、事件が発生してから大臣、副大臣あるいは政務官と連絡を上げる体制が、緊急時のときに連絡を上げなければいけない体制が本当になっていないという議論も、この委員会で当時なされたというふうに思うんですけれども、このときの反省が生きていないなというふうに今回も思いました。
 大臣の御答弁の中で、情報収集あるいは緊急時の連絡体制の見直しを図っていきたい旨の御答弁があったというふうに思いますので、ぜひこの点は何としても実行していただきたいというふうに思います。
 続きまして、警備体制について質問をさせていただきたいというふうに思うんです。
 調査報告書の中で外務省側から説明を受けていますが、在瀋陽総領事館の周りには中国側の武装警察官が四名、門のところに二名、そして前方と後方に一名ずつ配置されているというふうに思いますけれども、まず、中国側のこの武装警官の体制というのは、ほぼ恒常的にこういった体制をとられていたのか、あるいは最近の亡命希望者がふえたことによって警備の体制が強化されたものなのかどうか、この点についてお伺いします。

田中政府参考人
 警備の点については、最近の事例にかんがみ、徐々に拡充がされていたようでございます。特に、この辺は総領事館が集中をしているところでございまして、そのために、その総領事館を共通に守る武警の人々というのもいたということでございます。

丸谷佳織
 最近の状況に伴いまして中国側の武装警察官の警備の強化が図られていたという御答弁でしたけれども、それは日本側から警備の強化をお願いしたものなんですか、それとも中国側が最近の状況を見てみずから判断し、強化したものなんでしょうか。

田中政府参考人
 中国側による警備の強化でございます。

丸谷佳織
 では、公館の警備体制自体の質問をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、警備担当者の資質向上及び公館自体の機能の両面の改正が望まれるわけですけれども、現在の百八十七ある在外公館の警備体制というのが一体どのようになっているのか、お伺いしたいというふうに思います。
 私も余り警備自体については詳しくはないんですけれども、例えばネズミ返しがついていないような公館があり、直ちに改修したとか、そういったお話も聞くわけなんですけれども、監視カメラがありながら常日ごろ録画をしていないような、そういった警備体制の公館があるのか、あるいは監視カメラさえついていない公館があるのか、これをできるだけ簡単にお答え願います。

北島政府参考人
 お答え申し上げます。
 在外公館の警備強化につきましては、特にペルー事件の発生後、その一層の強化を図ってきておるわけでございます。人員の配置、それからいろいろな設備の強化ということでございますけれども、御指摘の監視カメラの問題につきましては、在瀋陽総領事館に五台の監視カメラ、それから監視モニター五台、そういったものを備えつけてあったわけですけれども、その備えつけていた場所がすべて建物の中で、建物の外にはなかったとか、それから録画装置がなかった、そういった不備がございました。この点については反省しております。

丸谷佳織
 今の御説明の中で、録画をしていなかったというよりは、録画装置がついていないものであったけれども、その監視カメラによって中の状況は当時モニタリングしていたという事実ですか。

北島政府参考人
 はい。録画装置がなかったわけですが、同時に、五台のモニターのテレビがあったわけですけれども、問題は、その監視カメラが設置されている場所が、査証の受付の部屋とかそれから正面のゲートのそば、そういったものになかったということがございます。

丸谷佳織
 そうしますと逆に、どこにそれは向けられていた監視カメラ、何をモニタリングするためのものだったんでしょうか。

北島政府参考人
 警備上の理由から詳細についての御説明は差し控えさせていただければと思いますけれども、例えば監視カメラ五台でございますが、これはすべて建物の中で、主に出入り口、一部は二階にあったわけですけれども、そういったところに設置されていまして、人の出入り、それをチェックするという観点から置かれておりました。

丸谷佳織
 今の御説明で、人の出入りをチェックするためというお答えがあったんですけれども、実際には今回のこの亡命希望者の方、塀を乗り越えてきたわけじゃなくて、正面玄関を突破してきたわけですよね。ですから、そういったところもモニタリングできなかったという事実は、非常に大きな反省点として残るべきものだというふうに私は思いますので、このことも含めて、公館自体の危機管理とまた警備体制の強化というのをぜひ早急に図っていただきたいというふうに思います。
 もう時間がないので最後の質問になるかというふうに思うんですけれども、今回の全体的な問題、また、そもそも論としまして、亡命希望者に今後どのように対応していくのかという問題があるかと思います。外務省は、今回の五名の方、脱北者というふうにおっしゃいますけれども、亡命者、難民として認識しているのかどうか確認したいというふうに思います。
 我が国に対する亡命希望者は、今まで第三国に亡命させたことはありましても、我が国に亡命させたことはないというふうに承知をしています。世界人権宣言第十四条で、すべて人は迫害を免れるために他国に避難することを求め、かつ避難する権利を有するとありますが、この条約自体の拘束力がない点、また、国際人権規約でも庇護権規定は挿入されなかったこと、そして庇護権は亡命者個人に帰属する権利とはとらえられておらず、庇護を与えるかどうかは受け入れ国の主権的判断にゆだねられ、国家の裁量いかんによるところが多いわけなんですけれども、内乱ですとかあるいは紛争ですとか、こういったことが多い中、恒常的に生み出される亡命希望者、難民について、日本政府としてこれからどのように対応していくべきだとお思いなのか、お伺いします。

川口国務大臣
 委員がおっしゃいますように、今回の問題の背景といいますか根底のところに、難民あるいは亡命者をどういうふうに日本として考えるかということがあると思います。この点について、さまざまな御意見があると思いますけれども、広く議論をされるということが重要だと思います。
 いずれにしても、今回の件は、人道的な見地から、この五人の方が望むところに行くことができるということが大変に重要だと私は考えております。

丸谷佳織
 まだ二分ありますので言わせていただきますけれども、本当に大臣がおっしゃいましたように、また、亡命させるべきだというようなことを簡単に言うことも、私は、政府としてあるいは議員として、一つ無責任な面もあるのかなというふうに思います。
 というのは、日本が亡命を受け入れるわけではなく、第三国に出国をさせるというところを考えると、どんどん亡命者は認定しましょう、難民は認定しましょう、そして第三国に送りましょうというのは、ちょっと筋が通らない部分もありますので、本当に今後、国会の裁量として、この難民あるいは亡命者に対してどのように庇護をしていくのか、保護をしていくのか、この点についてはしっかりと国会の中でも議論を重ねてまいりたいというふうに私たちも思っております。
 最後に、大臣に感想だけお伺いしたいというふうに思うんですけれども、今回、五月七日に行われました子ども特総、以前から主張させていただいておりました子どもの権利条約選択議定書、二つの署名がこの子ども特総の中でなされました。大臣も署名に向けて頑張りたいというふうにおっしゃっていただいていまして、大変期待をしていた分、本当にこの署名がなされて、その意義はどれだけ大きいものかというふうに、日本でニュースを見ながら非常に喜ばせていただいたわけなんです。
 実は、ぜひこの選択議定書に署名せよ、署名せよとずっと申し上げてまいりました。署名できるかできないかわからないという状況で、見守るような気持ちでいたわけなんですけれども、実際に署名をしたとか、そういった連絡が外務省の方からいただけなかったんですね。ニュースあるいは新聞報道で結果的には知ったというふうなことになりまして、一生懸命取り組んできたものですから、できれば、署名するのか、あるいはしたのかどうか、教えていただけるぐらいの外務省としての気配りというものがあればいいのになというふうに思いました。
 これがいわゆる政治家の不当な圧力に当たるのかどうかはわかりませんけれども、外交をする上で、ぜひこのような気配りができるような外務省としてまた活躍をしていただきたいというふうに私は思ったわけなんですけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣
 この二つについては署名をいたしましたけれども、私もよく記憶をしておりますけれども、委員がぜひその署名をということをおっしゃっていらっしゃったということは非常に記憶に新しいです。
 外務省、瀋陽の事件等でも、情報の伝達についていろいろ問題があるという御指摘はいただいているわけでございまして、この件についても、これについて非常に御心配をいただいていた委員にぜひ御連絡を申し上げることができればよかったと思いますけれども、情報伝達の体制については今後改善をしていきたいと考えております。

丸谷佳織
 以上です。ありがとうございました。